「バカの壁」はネット時代にますます高くなる 養老孟司×新井紀子「バカの壁」対談<上>

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養老:そういう世界はやはりバーチャルなんでしょうね。

新井:バーチャルなんですか。

養老:バーチャルが現実になってるんです。だから、ぼくは「それ、脳みそでしょ」って思ったんです。先ほど「心理学」と言われましたけど、まさにそういうことで、そういうのはすべて脳という世界の中で動いているんです。人の生活の中で脳の中の部分が肥大した社会を、ぼくは「脳化社会」とか「都市社会」と言ってきました。都市はバーチャルです。たとえば、東京は孤立したらすぐに食べていけなくなります。孤立したらすぐに消えてしまいます。

新井:そうですね。

コミュニケーションはホリスティックなもの

養老:そんなところに住んでいる人がいちばん偉くてまともだと思ってるんだから、バーチャルでしょう。そんな人たちが世界を動かしたら、世界が歪みます。

新井:そう思います。リアルというのは、私がいて、誰かと実際に会って話すということだと思います。だからテキストというのはバーチャルだと思っています。

著書を出版してきた私が言うのは変ですけど、本来、コミュニケーションというのは、もっとホリスティック(全体性)だと思います。何も書き残さなかったソクラテスはそのことを知っていたのでしょう。一期一会で、養老先生と私がここにいて、それぞれの人生を背負って会話をする。

対談を記事にしていただくのに、そういうことを言うとおかしいかもしれませんが、文字にして表現できることは1割もないと思うんです。読む側が受け取るのは、表現されたことのうちの1割程度かもしれません。すると、伝わるのは1%未満ということになってしまいます。ソクラテスはそのことを言ったのだと思います。文字で表現すれば同じことでも、いつ、どこで、どのような相手に向かって言ったかによって、全然違うことになることもあります。テキストが独立して状況から離れてしまったら、そのコミュニケーションは成立しないんだと。

でも、プラトンは、「先生、それ、もったいないですから、テキストにしましょう」って言ったんですね、きっと。

養老:そのとおり。そのプラトンが示した方向に突き進んだ結果、AIになっているんです。

新井:本当にそうですね。

(構成:岩本 宣明)

養老 孟司 解剖学者

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ようろう たけし / Takeshi Youro

1937年鎌倉市生まれ。東京大学医学部を卒業後、解剖学教室に入る。東京大学大学院医学系研究科基礎医学専攻博士課程を修了。95年、東京大学医学部教授を退官後は、北里大学教授、大正大学客員教授を歴任。東京大学名誉教授。『からだの見方』(筑摩書房、1988年)『唯脳論』(青土社、1989年)など著書多数。最新刊は『ものがわかるということ』(祥伝社、2023年)

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新井 紀子 数学者

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あらい のりこ / Noriko Arai

国立情報学研究所教授、同社会共有知研究センター長。一般社団法人「教育のための科学研究所」代表理事・所長。
東京都出身。一橋大学法学部およびイリノイ大学数学科卒業、イリノイ大学5年一貫制大学院を経て、東京工業大学より博士(理学)を取得。専門は数理論理学。2011年より人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトディレクタを務める。2016年より読解力を診断する「リーディングスキルテスト」の研究開発を主導。主著に『数学は言葉』(東京図書)、『ロボットは東大に入れるか』(新曜社)、『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)などがある。

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