殺人犯にされた人が語る「ネットリンチの恐怖」 心を病まないようにするには…
また、茨城県の常磐自動車道で8月に起こったあおり運転殴打事件で逮捕された宮崎文夫容疑者と、その車に同乗して犯行をガラケーで撮影していた女は世間を震撼させた。この“ガラケー女”と勘違いされてしまった女性の個人情報が、ひと晩のうちにネット上で流布され、Instagramのコメント欄に誹謗中傷の書き込みが連なるという騒動も起こっている。
「彼女の情報を拡散して、“こいつをたたきのめそう!”と憤慨していた人たちのTwitterを見ても、一般的な会社員の方が大半でした。そういう人たちって、自分のまじめさや正義感の強さをアピールするために人を攻撃しているように感じます。
モラルを振りかざす人ほど、悪を制裁するには何をしてもいいと思っているのか、ネットでのマナーが欠けているように見受けられますね。感情的になればリテラシーも低くなります。“デマ”を鵜呑みにする危険性は誰にでも起こります」
書き込まれた人を疑う前に誰が書いたかを疑う。その発信元(ソース)がどこなのか、信頼に足るのかなど、多くの検証を重ねるなどして初めて、“情報”として信じていいかどうかを判断するもの。信憑(しんぴょう)性を確認することを怠っただけで、知らないうちに誹謗中傷というネットリンチに加担してしまう可能性があるのだ。
拡散ボタンを押した“だけ”が命取り
「Twitter上でとある情報があったとして、それが数回リツイートされてしまうと、それがデマだったとしても真実かのように化けてしまいます。それがひとり歩きし始めると、こちらでは制御ができなくなる。リツイート数が多ければ多いほど、真に受ける人が増えてしまうんです。あくまでも“共有された数”というだけであって、数が多いから情報の信憑性が高いというわけではないということを知ってほしいです」
というのも、今年9月、橋下徹元大阪府知事が自身に関する投稿をリツイートしたジャーナリストを相手取り、「事実とは異なるにもかかわらず、パワハラをする人物だという印象を拡散された」と大阪地裁に提訴。橋下氏の勝訴判決が下され、賠償金を支払うよう命じられたのだ。たった1度、拡散ボタンを押すという行為をした“だけ”のようにも感じるが、
「実は、僕の件で2008年に捕まった人たちの中には、2ちゃんねるのデマや中傷の書き込みをコピーして、僕のブログのコメント欄に貼りつけた“だけ”で書類送検された人もいます。
最初にツイートした人の情報が借金だとしたら、リツイートボタンを押すという行動は、自分は連帯保証人になることに同意したと考えなければいけないと思います。Twitterでの“いいね”は“承認”であって、自分が気になったものを集めているだけですが、リツイートは“拡散”する行為。全世界にデマや中傷を広める片棒を担いでいるということを忘れてはいけません」