緒方貞子さんの「難民支援活動」が残した意義 UNHCRでの活動を通じて私たちが学ぶこと
緒方さんが残した功績
緒方さんは上智大学外国語学部長を歴任して、1991年に第8代国連難民高等弁務官に就任した。その経歴から見る優秀な人とは想像できないほど謙虚で思いやりのある人柄であった。東西の冷戦が終結した直後からの国連難民高等弁務官は2度再任され、10年間にわたって従事したことになる。
ちなみに彼女が国連と関係をもったきっかけは、かつて婦人参政権運動を主導され当時参議院議員だった市川房枝氏の熱心な誘いによって、1968年に日本政府代表団の1人として国連総会に参加したことだった。
1990年代、難民問題を抱える紛争地を積極的に訪れる「現場主義」(1年の半分は現地)の姿をニュース等で見聞きしていた。忘れられないエピソードは、私の母が紛争地での体調管理について尋ねると、「現地では縄跳びをしています」という返事をもらったことである。
現在に至るまで、数学の世界で生きている筆者であるが、数学の世界は証明によって皆が納得できる定理が積み重ねられていて、どんな権力者でもそれらを改ざんできない。一方で数学の世界を離れ、政治の世界に目を向けてみると何もかも選択であり、一筋縄ではいかないことばかりだ。
以下紹介する緒方さんの発言や考え方は、彼女に関する多くの書籍やニュース記事、You Tube等でも確認できるものである。とくに難民に関して「かわいそうだからしてあげるというものではない。やっぱり尊敬すべき人間ですから、その人間の尊厳というものを全うするために、あらゆることをして守らなきゃいけないという考え方です」ときっぱり述べておられたことが「本質」だ。
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