緒方貞子さんの「難民支援活動」が残した意義 UNHCRでの活動を通じて私たちが学ぶこと
私は日々学生に教える立場として、いろいろな課題を処理していくときの「順番」について述べている。重要性と緊急性に関する2つの軸から成る2次元平面上にいろいろな課題をプロットし、それによって処理する順番を決定する。次の①→②→③→④が基本である。
この考え方は、貞子さんが深く関わった活動などを参考にして得たものであり、多くの人たちにとっても参考になるだろう。
人はみな自分なりの恩返しをするもの
以下、貞子さんの活動や発言が大きく影響した私の数学教育活動について、簡単に触れておこう。私が数学の世界から一歩踏み出して数学教育活動を展開するようになったきっかけは1990年代半ばに、2000年代から始まる「ゆとり教育」の極端に形骸化された概略を知ったことである。
それから十数年後に「ゆとり教育」は見直されたものの、日本の「数学嫌い」の状況は他国と比べて顕著であり、この改善こそが大切だと捉えてきた(拙著『%が分からない大学生』(光文社新書)参照)。
当時から、「子どもたちを数学嫌いにする教育現場に新しい風を送ってみたい」と考えていた私は、貞子さんの「現場主義」を参考にして、小・中・高校に赴いて子どもたちに興味・関心を高める特別授業としての「出前授業」を行ってきた。桜美林大学に本務校を移してから出前授業は減ったが、1990年代半ばから現在までのべ200校以上の学校で1万5000人以上の生徒を対象に出前授業を行ったことになる。
これは貞子さんの「人はみな自分なりの恩返しをするものです」という発言に影響されたものだった。そして、桜美林大学の「学而事人(がくじじじん)」(学んだことを人に仕えよ)の精神と通じるものがあると筆者は考える。
――緒方貞子(元国連難民高等弁務官)
この言葉は、2002年に出版したカラーの絵本『ふしぎな数のおはなし』(数研出版)に寄せていただいた言葉だ。緒方さんは私の数学教育活動を励ましてくれた1人でもあった。
2019年現在も、難民支援の問題は世界各国が直面し、解決に取り組むべき課題であり続けている。
UNHCRを10年間にわたって率い、2003年から2012年にはJICA(国際協力機構)の理事長を務めた彼女のリーダーシップは決して忘れることはできない。
緒方貞子さんのご冥福をお祈りします。
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