ファッションビジネスのセオリー
ファッションというのは、“トレンド”や“流行”を生み出すことによって、そこから外れたものに“時代遅れ”や“ダサい”というレッテルを張り、それにより消費者を購買へと導くのです。
これがファッション業界の根本的な仕掛けです。ただ、流行を発信するだけではなく、きちんと新しい消費を生み出すために、“流行遅れ”という副産物も作るのです。そうすることにより、それまで最新のファッションだった服は、もう着られないダサい服になり、廃棄に追い込まれるのです。
かたや、それまでの服を取り上げられた消費者は、新たな流行に身を包むために、“最新”の服を手に入れるのです。
新しい服を買ってもらう合理的な理由
どんな業界でも同じですが、新しいものを作って販売する場合には、それを売るための正当な理由、消費者に購買を動機づける理由、が必要となります。特にファッション業界は、それが顕著です。
なぜなら、ラグジュアリーブランドは年に2回(詳しい説明は次回以降に)、必ず新しいコレクションを発表する仕組みになっているからです。これは一流ブランドの証しであるコレクションブランド(※)であるかぎり、逃れられません。
そして、そこで売り上げを確保することがブランドの存続につながります。言い換えると、古いトレンドを捨て、新たなトレンドを生み出すことが、ファッション業界全体の使命なのです。
では、ここまでの中締めとして、この仕組みをわかりやすく説明している文献をひとつ紹介します。大阪大学前総長で哲学者の鷲田清一氏が書かれた『たかが服、されど服』より、以下抜粋。
「いまこの時にときめいているものは、すぐにダサい屑のひとつに転落する。いまの時代に決定的なのはこれだ、このスタイルだ、と言いながら、舌の根の乾かぬうちにそれを流行遅れとして廃棄してしまうことで、モードは、この世にはじつは決定的なものは何もないという白んだ事実をむきだしにする」
※コレクションブランド=ニューヨーク、ミラノ、パリなどで年に2回行われているファッショウィークに参加し、ファッションショー形式で新しいコレクションを発表する
トレンドが発信されるまで
ここまでは、雑誌やメディアのいわゆる“トレンド”について説明しました。ここからは、もっと業界について知りたい、というマニアックな好奇心をお持ちの方のために、もう少し詳しく業界の流れを解説します。
トレンドは、メディアが各自で発信しているものだとお伝えしました。そして、その材料は、それぞれのブランドが発表しているファッションショー(コレクション)です。では、もう少しつっこんで、そのコレクションが出来上がるまでは、どんな流れになっているのでしょう?
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