宝島社はなぜ、出版不況でも稼げるのか? 出版社であり、メーカーでもある会社

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 私が「東洋経済オンライン」の編集長になってから、はや8ヶ月。そんなウェブメディアにどっぷり漬かる日々の中で、ひとつ確信したことがあります。それは、「これから5年で、日本のメディア業界が激変する」ということです。
「紙」衰えし後のメディア新世界の姿を大胆予測
 テクノロジーのさらなる進化は、単にメディアを「紙」から「ウェブ」へ置き換えるだけでなく、メディア業界の形そのものを一変させます。現在進行中のこの大波は、明治・大正期以来の、100年に一度の大変化です。
 では今後、メディアはどう変わっていくのか、5年後には、どんなメディア新世界が待っているのか、そして、メディア企業とメディア人は、どうすればウェブ時代に稼ぐことができるのか――それを、メディア業界の最先端を走るキーパーソンとともに考えます。
 第2回目は、女性ファッション雑誌などで知られる宝島社を取り上げます。なぜ出版不況の中でも、宝島社は豪快に稼ぐことができているのか。その秘密を探ります。

 ファッション雑誌シェアトップ、売上高は二ケタ増

メディア業界で、すっかり定着してしまった「出版不況」という言葉。確かに数字を見るかぎり、出版界は衰退を続けている。雑誌と書籍を合計した市場規模は、1996年の2兆6564億円をピークに右肩下がり。2012年には、1兆7398億円にまで減少している(出版科学研究所調べ)。

しかし、すべての出版社が右肩下がりとなっているわけではない。その“例外”のひとつが、『sweet(スウィート)』『InRed(インレッド)』などのファッション雑誌で知られる宝島社だ。

同社の2013年8月期の売上高は、前期比14%増の297億円となる見込み。営業利益も29.9億円を予測している。同社は、ファッション誌分野で数多くの“ナンバーワン雑誌”を有しており、ファッション誌市場におけるシェアは、トップの22%に上る(日本ABC協会データより)。

なぜ宝島社は出版不況でも稼げるのか? 伝説的な編集者として知られ、現在、取締役編集総局長を務める関川誠氏へのインタビューから、その秘密を探って行く。

――どこの出版社も苦しむ中、なぜ御社は稼げるのでしょうか。特に雑誌離れが叫ばれる20代、30代をターゲットとして、売り上げを伸ばしているのが驚きです。関川さんは、「雑誌の部数はまだ伸ばすことができる。可能性は無限だ」と語っていますが、今後5年を見据えたとき、雑誌市場で成長することは可能でしょうか?

関川誠(せきがわ・まこと)
宝島社 取締役編集局長
上智大学卒業後、ジェー・アイ・シー・シー(現・宝島社)入社。『別冊宝島』編集部を経て、『宝島』編集長。『CUTiE』『SPRiNG』『smart』などの創刊を担当。現在は、編集局長として全ての刊行物を統括する。

やはり雑誌市場全体で言えば、右肩下がりだとは思います。ただ、わが社に限って言えば、努力して雑誌を進化させることによって、市場シェアを取れるでしょうし、部数を伸ばせる可能性は必ずあるはずです。

――部数拡大のポイントになるのは何ですか?

非常に重要なのは、付録戦略です。宝島社のファッション雑誌には必ずブランドアイテム付録をつけていますが、それが部数の伸びを支えています。

付録という言葉からなんとなく、“単なるおまけ”という印象を与えるかもしれませんが、付録作りは編集の非常に重要な仕事。ブランドアイテム付録は雑誌コンテンツの一部です。付録をうまく使えば、雑誌が伸びる可能性はとても高いと思います。

付録戦略というのは、昭和初期からある、ものすごく古い戦略です。すごく古風に見えますが、付録はオンラインでは絶対にマネできないという強みがあります。パソコンやスマホの画面からは、何もリアルなものは取り出せませんから。

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