もうひとつの肝は物流だ。楽天のようなモールに出店している事業者は、商品の発送を自社で担うのが通常の商慣習だ。ごちクルでは複数の軽量物流会社と契約して、ごちクル側が各飲食店に配送車を手配する。この点が従来のモール事業にはなく、非常にユニークである。配送の手間を省くことで、飲食店には弁当を作ることに集中してほしいという。弁当ひとつの出荷に対して、図のようなコスト構造となる(注:原価率は開示されていない)。
50人の弁当コンシェルジェたち
飲食店にメリットのある形で、取り扱い弁当数を着実に増やしていった。その弁当をどのようにして売っていったのか。ごちクルは95%が法人利用。役員の会議や会社のイベントでの発注が多く、発注者である秘書や総務の方による口コミで認知が広がったのではないかという。一説には、MR業界の医者への弁当需要が大きく、病院に弁当を持っていって勉強会することもあるようだ。製薬会社1社での弁当の年間予算は数億円ともいわれている。
ごちクル主宰の濱野亜紀氏は楽天や野村證券でマーケティング畑を歩いてきたマーケティングのプロ。発注に結び付けるために、ふたつの工夫をした。
「写真の撮り方を工夫しました。通常、多くのお弁当の写真は、ご飯が手前に来ています。ご飯を手前に食べることが多いからでしょう。おかずを手前に撮影することで、お弁当にボリュームが出てよりおいしそうに見えるので、ごちクルではそのような写真を掲載しています」
もうひとつの工夫はカタログにある。
「当初はA5版のカタログを作っていましたが、サイズが小さいと捨てられてしまうこともあります。A4サイズの大きなカタログにすることで、秘書や総務の方がとりあえずとっておこうかな。と思ってもらえるようにしました。現在、カタログは数万冊発行しています」
リピーターは食べる人がいつも同じという役員会議などの定例会で発注する場合と、イベントの参加者に対して発注する2パターンがある。前者は食べる人が変わらないため、同じメニューではなく異なるメニューを発注し、後者は同じメニューを発注し続ける傾向にあるという。ごちクルでは注文を受ける比率はオンラインと電話が半々。電話は単に注文を受けるだけではなく、どんな弁当がいいかお客様に相談されることもある。50人態勢のコールセンターは、みな弁当に詳しいコンシェルジュだ。顧客サービスはザッポスを標榜している。
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