議員秘書が語る「選挙余剰金」のすさまじい実態

現役3人が匿名回答「報告書はまったく違う」

取材チームは、国会議員を最も間近で支える現職の秘書たちに接触を試みました(写真はイメージです。撮影:mits/PIXTA)
「法律で特段の報告の義務もない」――。選挙で余ったお金の行方を公開資料で確認できない衆参両院の現職国会議員268人のうち、多くの議員がこのフレーズを使って回答しました。そこに与野党の違いはありません。では、余剰金は一体、どこにいったのでしょうか。取材チームは、国会議員を最も間近で支える現職の秘書たちに接触を試みました。「実態を打ち明けるなら、匿名が絶対条件」。秘書が知る本当の余剰金の使い道とは? 取材記者グループ「Frontline Press(フロントラインプレス)」と日本大学・岩井奉信(政治学)研究室の共同取材チームによる報告、その5回目です。
一連の報道はこちらのリンクにまとめています

「絶対匿名」の条件で明かされた内実

国会議員の秘書は、「公設秘書」と「私設秘書」にわかれます。公設秘書は、国費で給与が支払われるため、法律上の身分は国家公務員と同じ立場にあります。議員1人当たり3人まで、と国会法で決まっています。私設秘書は、議員が私的に雇うため人数に制限はありません。

つまり、永田町の国会議員会館や地元事務所などで働く秘書は、総勢で3000人近くいる計算です。

秘書の仕事は多岐にわたります。議員のスケジュール管理に始まり、国会質疑のための資料集め、陳情の処理、政治資金パーティーの運営や出席者の確保などです。選挙になると、効果的に主張を伝える広報戦略を立てたり、後援会組織を立ち上げたりします。そして最も重要な仕事が、選挙資金の収集と支持票の確保です。

したがって、「選挙運動費用の収支」や「余剰金の行方」についても実態を熟知しているはず――。そう考えて取材チームは秘書たちに取材を試みました。

X議員の秘書 余剰金は「票のとりまとめ」にも

まずは、自民党のX国会議員のベテラン秘書。何人かの議員の秘書を経験しています。X議員の余剰金は5万円未満。そのため、調査・分析の「対象外」としていますが、この秘書の語る「余剰金の実態」はすさまじいものでした。

「選挙運動費用収支報告書に載せられない支出に使った。うちの余剰金はたしか、数万円だったと思うが、実は余った金はもっと多かったと引き継ぎを受けている。(本当の余剰金は)数百万だったと聞いている」

「(そうなるのは)支援してくれる方が『領収書なしでいい』と言って、寄付の形でお金を渡してくれるからだ。もちろん現金。振り込みは記録に残ってしまう。だから、振り込みの金はしっかり説明できるところに使う。領収書を発行しないお金は、選挙の時、けっこうたくさん集まる。余剰金は、ぶっちゃけて言えば、票のとりまとめをお願いする意味を込めて、企業幹部や自治会関係者などの接待に使う。ほかには、選挙の手伝いに来てくれた方たちへの差し入れや弁当代、つまり飲食代。公選法では報酬をもらえる人数や額が決まっているので、報酬を渡せない人たちへのお礼として使っている。報酬といっても、現金を渡すのでなく、飲食代を事務所で負担するとか、野球やコンサートのチケットなどにして渡すとか。これは、ほかの議員事務所にいた時も同じだった」

――選挙運動費用収支報告書の数字は、デタラメなのでしょうか?

「政治資金パーティーの収支報告と一緒で、ザルだし、収支報告の数字が全部正しいわけではない。例えば、パーティーの場合も、(政治資金規正法に基づく)政治資金収支報告書の収入を少なく記載するとか。現金でパーティー券を10枚とかまとめて買ってくれて、領収書も要らない、と言ってくれる中小企業の社長さんは多い。そういう金は収支報告書に載せられないので、表に出ない金となる」

——裏金?

「そう、裏。選挙資金の収支報告書の場合、公費負担額は変更できないので、収入部分をいじる。少なくする。領収書を出してしまうと、(先方の)企業会計との関係で、こちらもしっかり(報告書の収入に)記載しないといけないから、領収書をもらわない形でお金をもらえるようにするのがポイント。世間のみなさんからはご批判を受けるかもしれないけど、秘書の力の見せどころ。(先方が)会社として支出すると、領収書が必要になってしまうので、相手のポケットマネーとして出してもらう。だから、会社員でなく、会社経営者からいただく。領収書を発行しないお金というのは、正々堂々説明できない使われ方をしていると言ってもいい。うちの事務所は(それらの資金集めを)秘書に任せきり(だから議員は知らないかもしれない)」

Y議員の秘書 「手伝ってくれた人にお礼必要」

続いては、参院自民党のY議員の秘書です。Y議員は今回の調査対象となった選挙で、100万円前後の余剰金を出しています。取材チームの質問に対しては「余剰金の使途に規制はない」「報告義務はないが、適正に処理」という内容の回答を寄せていました。

「秘書にとって一番ありがたいお金は、振り込み入金など金融機関を通じた金銭でなく、現金だ。選挙になると、僕ら秘書は、とにかく寄付してもらえるようにお願いして歩き回る。(余剰金は)選挙を手伝ってくれたのに、公選法上支払いができないみなさんに使う。主に食事代として。ミニ集会開催を企画してくれたり、演説の人集めを助けてくれたり(した人に)」

——公選法が定める以外の運動員に報酬を支払うと、法に抵触します。

「わかっている。今の公選法は、運動員報酬の規定が細かいし、規模も小さい。もう少し枠を広げてほしい。ボランティアとしてやってくれる人もいるが、甘えてばかりいると、『あの事務所は義理を知らない』『弁当すら出さない』と言われてしまう。地方ほど、こうした傾向は強いと思っている。公選法上、支払いができないことを説明することもあるが、気持ちの問題なので法律論を説明して終わりというわけにはいかない」

——お礼として数十万円の現金を渡すケースも?

「むしろ、1万円とかの飲食代。あっという間に数十万になってしまう。今回の余剰金(100万円前後)は、そうやって使ったと記憶している。だから(報告書に収入の記載義務がある政治団体に)戻すことはできない。手元に残っていないから。(飲食に使った際、手帳などに誰にいくら使ったかの記録は)するわけない。もし見つかったら、証拠になってしまう。誰にいつ、いくらかはわからない」

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