閣僚8人の「選挙余剰金」が行方不明という現実 「意識の低さ」露呈、完璧な処理は首相ら3人

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前回に引き続き、「選挙運動費用の余剰金問題」を解明していく。今回は安倍首相をはじめとした現職閣僚の20人に焦点を当てた(写真:つのだよしお/アフロ)
『国会議員268人の選挙「余剰金が行方不明」の謎』(2019年6月17日配信)で既報のとおり、現職の全国会議員のうち、選挙で余ったお金の使い道を公的資料で確認できない議員が268人にもなることが分かった「選挙運動費用の余剰金問題」。議員一人ひとりはどんな状態になっているのでしょうか。現職の閣僚20人に焦点を絞ると、余剰金の使い道が分からない閣僚は8人に達していました。しかも、その「言い分」には不可解な内容も多く――。取材記者グループ「Frontline Press(フロントラインプレス)」と日本大学・岩井奉信教授(政治学)の研究室による共同取材、その続報です。
一連の報道はこちらのリンクにまとめています

菅官房長官も透明化 他の閣僚は......

共同取材では、現職の国会議員のうち、衆議院は2014年12月、参議院は2013年7月および2016年7月の選挙で当選した人を対象とし、その「選挙運動費用収支報告書」を分析するなどしました。調査と分析の対象にしたのは、460人です。余剰金が5万円未満だった議員や、衆院選比例代表に単独で立候補したことで報告書の提出義務のなかった議員などは除いています。

候補者個人の選挙運動会計には、政党交付金を源とする「収入」、ポスター制作費用などを税金で賄う「公費負担」といったかたちで税金も絡んでいます。そのため、選挙後に手元に残ったお金は、公的性格を帯びているとも言えます。

ところが、公職選挙法は「余剰金」の処理方法については何の規定も設けていません。使途の報告義務もありません。それでも、資金の透明化を図る議員は、余剰金を自身の政治団体に戻して「政治団体の収支報告書」に明記しており、公開資料でその行方を確認できるようになっていました。

現職閣僚の20人は、手元に余ったお金をどう処理していたのでしょうか。

安倍晋三首相、菅義偉官房長官、山本順三国家公安委員長の3人は、余剰金と全く同じ金額を自らの政治団体に入れていました。選挙でお金が余ったとしても、収支報告書が公開される政治団体に余剰金を1円単位まできっちりと入れ、お金の行方を誰でも確認できるようにしている、と言えます。いわば、“完璧な処理”です。

石田真敏総務相も、余剰金とほぼ同額(差額787円)を政治団体に入れていました。ほぼ“完璧な処理”と言えるでしょう。

日大法学部の岩井奉信教授(政治学)の話

(撮影:穐吉洋子)

「安倍首相らは余剰金と同じ金額を1円単位まできちんと政治団体に返していることから、議員のガバナンスがしっかり効いていると言えるでしょう。菅氏は元総務相で選挙関係の専門家ですから、お金のことで追及されたくないという姿勢もうかがえます」

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