安倍1強政権に浮上する「麻生太郎」リスク 「産まない方が問題」失言、福岡知事選は横車
底が見えない統計不正問題で政府与党が防戦を強いられる中、安倍晋三首相を支える大黒柱、麻生太郎・副総理兼財務相の「自分勝手な行動と失言」(自民幹部)が、政権運営の悩みの種となっている。
主要野党の政権攻撃に「火に油を注いだ」(自民国対)のが、麻生氏の「産まない方が問題」という失言。野党がすぐさま予算委員会審議で追及し、麻生氏は渋々発言を撤回して謝罪した。麻生氏の地元の福岡県知事選では、前回まで与党が推薦していた現職知事の対立候補を擁立し、強引な手法で党推薦を決めて「保守分裂選挙」を主導。実力者・麻生氏の横車が統一地方選での自民党の戦略を混乱させている。
福岡県知事選は統一地方選前半戦の4月7日に投開票される10道県知事選(3月1日告示)の一つだ。当初は過去2回の選挙で圧勝してきた小川洋知事(69)の無風当選が確実視されていた。しかし、麻生氏が自民党福岡県連を動かし、側近で元厚生労働官僚の武内和久氏(47)を担いだことで状況が一変した。同県連は昨年末に武内氏の擁立を決定し、1月末には麻生氏自らが安倍首相や二階俊博幹事長らを強引に説き伏せ、自民党本部の武内氏推薦を取り付けた。このため、選挙戦は現職の小川氏と武内氏が激突する保守分裂選挙に陥った。
福岡知事選は「麻生VS反麻生」
武内氏の推薦決定には地元選出の武田良太衆院議員(二階派)ら自民3議員が反発して、小川氏支持を公言。現職推薦を決めていた県町村会など自民党支援団体も小川氏を支援する方向だ。さらに、政界引退後も地元福岡への影響力を保持する山崎拓元副総裁(石原派)や古賀誠元幹事長(岸田派)も、麻生氏の対応への不満から小川氏を支援する構えだ。
このため、「麻生VS反麻生」で福岡の保守陣営が真っ二つに分裂するという異常事態となった。しかも、自民党の事前世論調査では、小川氏が武内氏を含めた他候補を圧倒している。自民党本部も「保守分裂では参院選への悪影響は避けられない」(選対幹部)と頭を抱えている。
麻生氏が今回、強引に竹内氏擁立に動いた背景には、小川現知事への恨みがあるとされる。そもそも小川氏は、麻生氏が首相時代の内閣広報官を務めるなど、麻生氏の身内だった。しかし、鳩山邦夫元法相の死去に伴う2016年夏の衆院福岡6区補選が保守分裂選挙となった際、麻生氏が推した新人候補(落選)を小川氏が支援しなかったことなどに麻生氏が激怒、それを機に「小川降ろし」に傾いたとみられている。
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