閣僚8人の「選挙余剰金」が行方不明という現実 「意識の低さ」露呈、完璧な処理は首相ら3人

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では、余ったお金の行方が分からなかった閣僚は――

河野外相ら8閣僚は余剰金の行方を確認できず

余剰金の行方を公開資料で確認できない閣僚は次の8人でした。

麻生太郎・副総理兼財務相、山下貴司・法相、河野太郎・外相、根本匠・厚生労働相、吉川貴盛・農林水産相、原田義昭・環境相、岩屋毅・防衛相、渡辺博道・復興相。

共同取材チームは、これら8人に取材し、「余剰金をどのように処理したか」などを質問しました。事務所を通じて得た内容は次の通りです(回答の有無は6月14日現在)。

回答を見ると、「選挙運動費用の残金の使途に法令の規定はなく、報告義務もない」「法令に従って適正に処理している」という同じような言葉が多く並んでいます。

政治家は選挙に全力を傾けます。選挙資金はそれを支える重要なものですが、似たような言葉が並ぶ回答からは、「たとえ法の規定がなくても、自ら進んで使い道を明らかにする」という姿勢は見えませんでした。

麻生太郎氏側 「残金は口座にそのままある」

麻生太郎・副総理兼財務相は2014年12月の選挙で、31万円余りのお金を残しています。これはどこに行ったのでしょうか。

麻生太郎・副総理兼財務相(写真:つのだよしお/アフロ)

麻生氏の秘書に複数回、取材できました。最終的な回答となった6月11日の取材記録によると、秘書はおおむねこう答えています。

「2014年の31万なにがしの余剰金、これは今でも(金融機関の)口座にあります。そのまんま。2017年の選挙の時も余剰金が出たんですが、それは(麻生氏による)個人の寄付として政党(政治団体)の方に戻しております。14年の時(の残金)はそのまま(口座に)残してあります」

選挙で余ったお金を何にも使わず、なぜ何年も現預金として残してきたのでしょうか。政治活動に使うため、政治団体に入れて「政治資金」にしなかったのはなぜでしょうか。2014年選挙の余剰金は残したままにしておく一方、3年後の選挙で余ったお金だけを政治団体に入れたとする理由は?

疑問の残る回答でした。

日大法学部の岩井教授は、こう指摘します。

「余剰金の行方がはっきりしない閣僚たちは、寄付や税金が含まれる公的なお金の使い方への意識が低いと言わざるを得ません。選挙で余ったお金を政治団体に入れるということは、何に使ったのかを公開される収支報告書ではっきり国民に説明するということです。選挙の余剰金の使い道を明らかにさせるためにも、公選法を改正すべきだと考えています」

寄せられた回答の数々(撮影:穐吉洋子)

現職閣僚20人のうち、余剰金がゼロだった、つまり「公費負担」を含めても手元に1円も残っていないのは、以下の4人でした。

柴山昌彦・文部科学相、世耕弘成・経済産業相、宮腰光寛・内閣府特命相、鈴木俊一・東京五輪担当相。

茂木敏充・経済再生担当相の余剰金は、5万円未満でした。

また、平井卓也・IT政策担当相は余剰金を出しているものの、共同チームによる取材の結果、「自己資金と全額相殺された」ことを確認。余剰金は実質的にゼロということになりました。片山さつき・内閣府特命相も同様の結果でした。石井啓一・国土交通相は、選挙運動費用収支報告書の提出義務がない衆院比例代表での立候補で、調査の対象外でした。

共同取材チームは、選挙運動費用の余剰金に関する問題を引き続き報道します。次回は、「余ったお金の処理」には与野党の違いがないことを軸にお伝えする予定です。

共同取材チームは、本間誠也、当銘寿夫、木野龍逸、宮本由貴子、伊澤理江、穐吉洋子ら(以上、Frontline Press)、岩井奉信、安野修右、山田尚武(以上、日本大学法学部)で構成しています。

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【2019年7月3日17時03分追記】初出時、公開資料から余剰金の行方を確認できない議員の数に誤りがあったので修正しました。

Frontline Press

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「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年5月に合同会社を設立して正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や研究者ら約40人が参加。スマートニュース社の子会社「スローニュース」による調査報道支援プログラムの第1号に選定(2019年)、東洋経済「オンラインアワード2020」の「ソーシャルインパクト賞」を受賞(2020年)。公式HP https://frontlinepress.jp

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日本大学・岩井研究室

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日本大学法学部政治経済学科・岩井奉信教授の研究室。専門は現代日本政治。

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