議員7人「選挙余剰金」消えた公費負担分の理屈 報告書上の収支ゼロは公費負担分が丸々余る

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「選挙運動費用の余剰金」問題の背景にはさまざまな要因がある(画像はイメージです。写真:wpo/PIXTA)
選挙で余ったお金の行方を公開資料で確認できない――。「選挙運動費用の余剰金」問題の背景には、さまざまな要因があります。最も大きいのは、公職選挙法に余剰金の使い道などについて規定がなく、報告義務も課せられていないこと。そのため、疑問だらけの処理があっても、これまでは問題にならなかった可能性があります。さらに、国会議員の事務所担当者に「選挙運動費用収支報告書」に関する知識が足りない現状も見えてきました。取材記者グループ「Frontline Press(フロントラインプレス)」と日本大学・岩井奉信(政治学)研究室の共同取材チームによるリポート、4回目はそうした「疑問ケース」を取り上げます。
一連の報道はこちらのリンクにまとめています

山口県知事は不備を認めた

「知事、選挙余剰金使途不明 14年 公費負担分の140万円=山口」(2018年12月28日、読売新聞西部本社版)、「知事選の138万円余、使途不明 村岡氏、収支報告書未記載 山口県」(2018年12月29日、朝日新聞山口県版)――。

昨年末から今年初めにかけ、山口県の新聞各紙にこんな見出しの記事が掲載されました。スクープした読売新聞の報道内容は、同社のHPでも閲覧できます

舞台は2014年の山口県知事選。現職の村岡嗣政知事は初当選した2014年の知事選の際、約140万円のお金を余らせながら、その行方がわからなくなっている、という報道でした。

立候補者の「支出」にはポスター代など税金で賄われる「公費負担分」が含まれています。一方、「収入」は政党支部(政治団体)や個人からの寄付、自己資金などによって成り立っています。

余剰金の算出は簡単です。

余剰金 = 収入 −(支出 − 公費負担) → 余剰金 = 収入 − 支出 + 公費負担

 

つまり、選挙運動費用収支報告書上で収入と支出が同額であれば、公費負担分は余剰金になってしまうのです。一連の報道によれば、知事が山口県選管に提出した「選挙運動費用収支報告書」の収支はほぼ同額。一方、約142万円の公費負担を受けていました。報告書を眺めると、(見かけ上の)収支の差額はほぼゼロですが、実際には約140万円の公費負担を余らせていたのです。

一連の各紙報道によると、余剰金の行方を問われた知事側は「(政治団体である)後援会に戻した」と説明したようです。ところが、政治団体の「政治資金収支報告書」には、その記載がありません。つまり、「不記載」。したがって、政治団体のお金の取り扱いを定めた政治資金規正法に抵触する恐れがある、という報道でした。

結局、知事側は「当時の担当者が公費負担について認識がなく、政治資金収支報告書に記載しなかったと思われる。事務処理上のミスで、意図的ではない」と釈明し、約1カ月後に知事は関連する収支報告書の訂正を県選挙管理委員会に届け出ました。

衆参両院の国会議員を対象とした今回の取材で、共同チームはこのケースを重視し、内部で「山口ケース」などと名付けていました。なぜなら、これと似たようなケースが国会議員にも続出していたからです。

“見かけ上の収支ゼロ”には余剰金

共同チームが調査対象としたのは、2014年の衆院選、および2013年と2016年の参院選です。一定の基準を設け、調査・分析の対象は460人としました。すると、衆参で約20人の議員が、報告書の見かけ上の収支の差額を1円単位までピッタリ「ゼロ」としていました。つまり、これらの「山口ケース」では選挙の公費負担分がそのまま余剰金となっているのです。

衆院議員の鈴木俊一・東京五輪担当相(岩手2区)、立憲民主党の江田憲司衆院議員(神奈川8区)など5人の事務所は、取材を受けて初めて、公費負担分を勘定に入れずに選挙運動費用収支報告書を作成していたことに気付いた、と釈明しました。

これら5人の議員側は「初歩的なミスだった」として、共同チームの取材を受けた後、選挙運動費用収支報告書の訂正を各選管に届け出ました。その結果、余剰金はゼロかゼロに近くなり、報告書上の辻褄は合ったとみられます。

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