国会議員268人の選挙「余剰金が行方不明」の謎

調査対象の6割、公開資料で使途を追えず

選挙運動費用の余剰金の使途を確認できない現職議員が、衆参両院で267人いることがわかった(写真:wpo/PIXTA)
選挙で余ったお金の使途が確認できない――。各候補の選挙運動費用の収支を示す書類を分析すると、お金を余らせてその使い道を公開資料で確認できない現職議員が、衆参両院で268人いることがわかりました。調査や分析の対象とした議員460人の6割近くに当たります。余剰金には、国からの政党助成金や国が負担する選挙ポスター代などが含まれており、「公的」な性質を帯びています。
なぜ、こんな事態が起きているのでしょうか? 現行の制度に問題はないのでしょうか? 取材記者グループ「Frontline Press (フロントラインプレス)」と日本大学・岩井奉信教授(政治学)の研究室は、「選挙運動費用の余剰金」をめぐる全体像を初めて明らかにしました。
一連の報道はこちらのリンクにまとめています

公開情報をベースに調査を開始

この共同取材では、衆議院は2014年12月、参議院は2013年7月および2016年7月の選挙を対象とし、各議員が選挙管理委員会に提出した「選挙運動費用収支報告書」の要旨を集めることから始めました。「報告書」は官報や都道府県の公報に掲載されており、誰でも入手可能。国立国会図書館でも閲覧できます。

ただ、報告書提出の義務のない衆院比例代表に単独で立候補した議員などは、調査・分析の対象から外しています。余剰金が5万円未満の議員についても同様です。

選挙運動で余ったお金は「報告書」の数字から算出します。

必要な項目は3つです。まず、候補者が選挙資金として集めた「収入」。事務所の設営などに使った「支出」。そして、看板やポスター代などを税金で賄う「公費負担」です。

選挙運動の「収入」は、支持者からの寄付、政党からの資金、自己資金などから成ります。候補によっては多額の自己資金を「収入」に計上しているケースもあり、お金が余ったからといって、それ自体がすぐ問題になるわけではありません。ポイントは「余剰金の行方」です。

「収入」には、政治団体などを経由して候補者に入ってくる「政党本部からの資金」が一定の割合を占めている(政党公認候補の場合)。共産党を除く各政党は国から政党交付金を受け取っており、その額は年間で合計約320億円になる。一方、「支出」に含まれる「公費負担」とは、ポスターや法定ビラの印刷、選挙カーの借り上げ費用などを指す。報告書の支出欄にのみ記載し、収入欄には記載しない。

使途不明の最高額 約2725万円

共同取材チームは続いて、各議員に関係する政治団体の「政治資金収支報告書」に目を通すことにしました。

この報告書には、1年間の政治活動にかかったお金の動きが載っています。一方、選挙のときは公職選挙法によって、政治団体の会計とは別に、選挙用の会計帳簿を新たに作らなければなりません。そこに政治団体の資金を入れるケースが一般的。報告書を調べたのは「選挙後にお金が余った場合、再び政治団体に入れたのか」を確認するためです(ただし、政治団体は5万円未満の収入については、相手方の名称を報告書に記載する義務がない)。

対象は「余剰金」を出したすべての議員の政治団体です。すると、思いがけないことが次々に見えてきました。

「余剰金」を政治団体に戻したことを確認できず、使途がわからない議員が268人もいたのです。それら議員の余剰金を合計すると、約9億5000万円。最高額は約2725万円でした。

共同取材チームにファクスで寄せられた各議員の回答。このほか電話やメールでも回答が届いた(撮影:穐吉洋子)

公選法は、余剰金の処理について何も定めていません。「政治団体への返却」や使いみちの報告も義務付けていません。ですから、余剰金をどう使っても公選法に触れることはないのです。

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