では、「山口ケース」と同様でありながら、修正の対応もしていない議員はどうなっているのでしょうか。
数百万円の余剰金、いったいどこへ?
選挙運動費用収支報告書の「見かけ上の収支がぴったりゼロ」であり、かつ、何らの対応も表明していない議員は7人です。この7人の余剰金の行方は、政治団体の収支報告書など公開資料では確認できません。行方不明です。
「余剰金が未処理であるという認識は?」といった共同チームの問いに対し、それぞれの事務所側はこう説明しました。金額は上に示した算式で導いた「余剰金」の額です。
【衆院 4人】
「法令に従い適正に処理しているところです。法令上、特段の報告義務もないと承知しています」
「選挙運動費用の残額については、法令は特に規制を設けてはいませんし、特段の報告義務もないと承知しています」
無回答
「法令にのっとって適切に処理しております」
【参院 3人】
「法律上、余剰金につきましては何らの記載を求められておりませんし、報告書にはその記載の欄もございません。よって未処理との指摘は当たりませんし、当方にその認識はございません」
無回答
中西氏は6月21日公開の記事で示した通り、最初の回答では「このたびのご指摘により未処理の事実を認識しました。関係する政党支部の政治資金収支報告書を訂正いたします」といった内容を寄せていました。ところが、その翌日に2度目の回答を寄せ、最初の回答を撤回し、「選挙運動費用の残額について、法令は特に規則を設けていませんし、特段の報告義務もないと承知しております。法令に従って適正に処理を行っております」としました。
上に示した衆院議員4人のうち、石原、中山、藤原の3氏は2014年12月に続く2017年10月の選挙の際も、見かけ上の収支の差額は「ぴったりゼロ」になっており、公費負担と同額がそのまま余剰金になっています。黒岩氏も見かけ上の収支の差額は「ほぼゼロ」でした。
2017年選挙の余剰金は、どうなったのか。その行方を追うには、2018年分の「政治資金収支報告書」をチェックする必要があります。その公表は2019年秋。各議員の担当者は果たして、余剰金に対する認識を改めているのでしょうか。
共同取材チームは、本間誠也、当銘寿夫、木野龍逸、宮本由貴子、伊澤理江、穐吉洋子ら(以上、Frontline Press)、岩井奉信、安野修右、山田尚武(以上、日本大学法学部)で構成しています。
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【2019年7月3日17時03分追記】初出時、今井絵理子議員の余剰金と処理方法について誤りがありましたので、今井議員に関する記述を削除いたしました。関係者の皆さまにお詫びして訂正します。併せて、見出しと記事中で選挙運動費用収支報告書の見かけ上の収支が一致し、余剰金の行き先が確認できない議員数を「8人」から「7人」に修正しました。
【2019年8月22日0時00分追記】藤原崇議員に対する取材は5月30日、ファクスによる書面にて行った。その中で、記事掲載の予定日として『6月上旬~中旬』を明記し、6月3日までの回答を求めた。藤原議員側はその6月3日、「回答するにはもう少し時間が必要」と締め切り日の延長を求めたが、藤原議員に関する記述のある記事の掲載日(6月17日、および同25日)までに連絡がなかった。
一方、藤原議員側は6月25日の記事掲載後、「余剰金はない」旨を配達証明郵便にて通知してきたが、この時点で当該の「選挙運動費用収支報告書」の訂正はされていない。藤原議員側は7月19日、同報告書の訂正願を出して受理されたため、この時点で公的資料における余剰金は「2,395,028円」から「0円」になった。
なお、6月25日の記事中、藤原議員側の対応を「無回答」と記述したのは、同議員側からの回答延期を求める連絡の後、2週間近く回答がなかったことによる判断である。他方、藤原議員側は「『精査の上で回答するにはもう少し時間が必要』と回答していることから、『無回答』とした事実はない」と主張している。
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