公職選挙法の改正で「余剰金」の抜け穴を防げ

岩井奉信・日本大学法学部教授インタビュー

(写真:masa/PIXTA)
衆参両院の現職国会議員のうち、選挙で余ったお金の行方を公開資料で確認できない議員は268人——。この数字は、取材記者グループ「Frontline Press(フロントラインプレス)」と日本大学・岩井奉信(政治学)研究室の共同取材チームによって明らかになったもので、調査・分析対象とした国会議員460人の実に6割近くに上ります。なぜ、こんなことが起きているのか。その背景には「公職選挙法の不備」という大問題が横たわっていることも見えてきました。共同チームに加わった岩井教授はこの問題をどう捉えているのでしょうか。公費も含まれることが多い余剰金の行方を明確にするには、制度をどう改善すればよいのでしょうか。岩井教授にじっくりと尋ねました。
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「お金のことは政治家本人に教えない」

——余剰金の使途を公開資料で追うことができない国会議員が、調査対象の約6割。この数字をどう思われましたか?

「ただちに評価するのは難しいと思います。6割の事務所の中には、余剰金について(きちんとした処理方法を)わかっている事務所もあるだろうし、(意図して行方を)わからなくしている事務所もあるだろうし。ただ、余剰金の扱い方をわかっていないという事務所はあまりないと思います。(各党は)公職選挙法などについて、議員秘書を対象に研修を行っているはず。最低限の知識はどの議員の事務所もあるはずです」

「昔の自民党でいえば、若手や新人の選挙の際には派閥がちゃんと世話をしていました。経験豊富なスタッフや秘書を付けたり。事情をわかっている秘書などが選挙事務所に入っていれば、(余剰金の扱いは)わかっているはずです。(派閥の力が弱くなった)いま、そうした仕組みはどうなっているんだろう、とは思います」

(撮影:穐吉洋子)

——余剰金には、税金を原資とするお金が含まれているケースも多いです。それぞれの議員たちは、その意味や処理方法をわかっているのでしょうか?

「政治の世界は、お金のことは、議員や候補者本人に何も教えない、という世界だと言われています。ですから、政治家本人に聞いても何もわからないでしょう。お金に細かくて、いろいろとチェックする議員もいますが、そういう人は嫌がられます。(選挙のお金について)議員本人が知っているとしたら、それはまずいことでもあるんです。選挙違反で摘発されたとき、本人も責任を問われますから。知らないほうが政治家本人にとっても、事務所にとっても都合がいいんです」

「選挙の会計担当者にまったく事情に通じていない人を起用するケースもよくあります。与党も野党も問わず、です。そして、(会計担当者に)『選挙期間中は海外にでも行っててくれ』と言って、選挙事務所には寄せ付けない。そうすると、警察に摘発されても、ほんとに何も知らないで通すことができる。会計担当者は、選挙運動費用収支報告書で(『出納責任者』として会計の)責任者となっているけど、実際は違うことが少なくない」

実態は「全員が報告書の訂正必要」

——余剰金の行方を追えない多くの議員側からは「法令に従って適正に処理しています」という内容の回答が届きました。どこかで“すり合わせ”を行った印象を持ちました。

「268人について、1人ひとりの実態を追及したら、おそらく全員が『余剰金は政治団体に入れ、政治活動に使った』と言わざるをえなくなり、(政治団体の)政治資金収支報告書を訂正することになるでしょう。そうしないと、余剰金を私物化してしまったという話になり、一時所得として税金がかかってしまう。『法令に従って適正に処理』のような回答がいちばん無難なんです」

「余剰金は、実は都合の良いお金なんです。だって、法律は何も規定してないんだから。法令に従って適正に処理していると言ってますが、処理の方法が定まってないんです」

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