自分から話しかけることが苦手で、子どものころからいじめを受けた。教師や親から「覇気がない」「感情がない」と言われる一方で、小学校時代には、ストレスから校内でホースの水をまき散らすなどして暴れた末、転校を余儀なくされたこともあったという。
学校の成績はトップクラスで、高校は地元の進学校に進むものの、オンラインゲームにはまるようになって成績が下がり、なんとか入った大学も中退。その後は転落の一途だった。
業を煮やした親から、なぜか「寺に入って、自分を見つめなおしてこい」と言われ、地方にある寺の住職の下に預けられた。ただ、預け先がよくなかったのか、ほどなくして「ヤクザのパシリをさせられるようになりました」。そこで、暴力を受け、逃亡。ネットカフェで寝泊まりする中、たまたま目に着いたユーチューバーに対して殺害予告などを送り付けたところ、逮捕され、実刑判決を受けた。
進学の際に借りた奨学金の返済を肩代わりしていた親からは「こんなにしてあげているのに、どこまで落ちていくんだ」と責められ、身元引き受けを拒まれた。そして、再び“ネットカフェ難民”に。ネットで貧困者支援などを行うNPO法人を探し、彼らの支援の下、生活保護を利用しながら、介護施設で働き始めたのだという。
生活保護の利用は4年ほどでやめ、社会福祉士の資格も取ったが、生活は安定しなかった。介護労働は心身ともにハードなわりに、労働条件は悪い。ケンゴさんの場合、人間関係がうまくいかないこともあり、「よりよい待遇の職場を探して」転職を重ねるわけだが、はた目には「仕事を転々としている」と映るのだろう。親から「発達障害かもしれないから、病院に行くように」と言われたのもこの頃だという。
友達さえいたら、もっとうまくいった
取材中、ケンゴさんは「友達がほしい」と何度も繰り返した。
ケンゴさんによると、子どものころ友達と呼べる人が1人でもいれば、気持ちが落ち着き、勉強にも集中できたという。せっかく入った進学校で成績が下がったのは、友達がいなかったから。正確には、1人いたが、その彼は別の高校に籍を置く不登校の生徒で、親から「そんな子と付き合うな」と言われた。ようやくできた友達を奪われ、逃げ込んだ先がオンラインゲーム。「ゲームに没頭することで、寂しさを埋め合わせていました」。
大人になってからは、会員制交流サイト「ミクシィ」を通し、何人もの女性に会った。しかし、いずれも友人関係にさえなれずじまい。「僕が受け身で黙ったままだから、(相手も)面白くなさそうでした」。あまりに大勢の相手にメッセージを送ったところ、スパム扱いされ、最後はアカウントが凍結されてしまったという。
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