高校生の可能性を、無限に膨らませる方法 前橋育英・荒井直樹監督のリーダーシップ(下)

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「継続は力なり」ということわざがある。一方、「三日坊主」とも言われる。ルーティンワークとして反復練習を繰り返せば力がついていく反面、同じことを続けるのは容易ではない。どうすれば三日坊主から脱却し、継続できるようになるのか。選手を努力家にする第一歩は、指導者の考え方にあると荒井は考えている。

脳医学者の林成之が書いた、『〈勝負脳〉の鍛え方』(講談社現代新書)という著書がある。多くのアスリートに愛読され、昨年のJリーグMVPに輝いた中村俊輔もセルティック時代に読んでいた。

荒井もこの本が好きで、何度も読み返している。

「人間の脳は、忘れるようにできている。そうじゃないと、新しいことが入ってこない。林先生の本を読んで、『脳はそういう仕組み』と学んだから、選手が忘れても腹が立たなくなった。人間は忘れるようにできているなら、同じ話をすればいい」

使えるノートとは?

荒井がモットーとする「シンプルに、しつこく」は、ここに通じる。忘れてしまったら、思い出せばいい。

そう仕向ける仕組みを、荒井は作っている。選手それぞれに曜日を決め、毎週1度、野球ノートを提出させるのだ。1日に提出するのは7、8人で、荒井はそれぞれにコメントを書いて返す。なるべく否定せず、背中を押すようなコメントを心掛けている。

野球ノートを採用するチームは少なくないが、荒井は使い方と効力を意識させている。

「僕によく思われるために書くのではなく、『自分が振り返ったときに使えるノートにしろ』と話している。書くことで覚えるし、振り返ることもできる。たぶん、普段からそういうことをしているから、選手に『これをやってくれ』と言ったとき、スッとできるのだと感じている。グラウンドでは全員に同じだけの会話をなかなかできないけど、ノートでは同じ時間と気持ちを伝えられる。これが大きい」

選手の書いてきた内容が、チームや荒井のヒントになる場合も多い。たとえば、「すき間時間を大切にしたい」と記した選手がいた。具体的には打撃練習で順番を待っているとき、ピッチャーのタイミングに合わせて頭の中でバットを振ってみる。そうした小さい積み重ねが、後に大きな力になる。

「僕が上から押さえつけて言うのではなく、下から上げてきたものを提供するのはすごくプラスになる。自分でやる感覚を持たせたい。ノートの内容を紹介された選手も嫌な気はしないと思う。グラウンドで練習するのは平日なら3~4時間くらい。それ以外の時間で、どうやって自分が野球と向き合うかが大事」

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