現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
今回紹介するのは「職を失い、今まで以上に社会の厳しさ、冷たさが身に染みつつ、職を探す力もなく、ただ漠然と日々を送っています」と編集部にメールをくれた、49歳の独身男性だ。
こんなにつらいのに、周りはだれもわかってくれない
いい具合の枝が見つからない。あっちは低すぎる。こっちは細すぎる。高さも、太さも申し分ないと思ったら、今度は余分な小枝が茂っていて、うまくロープを渡せない。もっと山奥に入ってみようとも考えたが、誰かに見とがめられそうだったのでやめた。
昨年夏、クニミツさん(49歳、仮名)が何日間も山中をさまよった末、ようやくわかったこと。それは、「首を吊るのにちょうどいい木って、意外とないんだな」ということだった。
長年、メンタルを患っていたクニミツさんは2年ほど前、仕事中に交通事故に遭遇。以来、後遺症やフラッシュバックに悩まされるようになった。「こんなにつらいのに、周りはだれもわかってくれない」と思い悩み、自殺を思い立ったのだという。
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