29歳東大院生が「書類選考」で落ち続けたワケ

80社応募して内定を1社も得られなかった

東京大学大学院で物理を専攻していたフユキさん(29歳)は、レジで金額が記憶できないという(筆者撮影)  
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
今回紹介するのは「大学院を卒業し一般枠で正社員として就労しているものの、適応障害を発症し勤怠が不安定で何度も休職しています。転職して障害者枠に落ち着くべきか悩んでいます」と編集部にメールをくれた、29歳の独身男性だ。

聞いたそばから忘れてしまう…

「物理の面白さですか? 物ごとの理(ことわり)を知ること、でしょうか。もっと具体的に? そうですね――。例えば、コップに注いだ水の温度は時間がたつと、周囲と同じになりますよね。物理を学べば、その理屈を知ることができます。すべての自然現象の根底。それが物理だと言ってもいいでしょう」

この連載の一覧はこちら

東京大学大学院で物理を専攻していたフユキさん(29歳、仮名)に言わせると、数多くある三角関数の公式も「sin²θ+cos²θ=1」と「tanθ=sinθ/cosθ」さえ覚えていれば十分なのだという。

「そのほかの公式は、計算すれば導き出せるので、覚える必要はないんです」

一方で、フユキさんは買い物や飲食店などでの会計時に、金額を伝えられても、払うことができない。発達障害の1つ、自閉症スペクトラムで、耳から聞いた言葉をそのまま記憶する能力「聴覚的短期記憶」が低いからだ。金額を口頭で言われただけでは、聞いたそばから忘れてしまうのだという。

「それ以外にも、繰り上がりがあるような足し算もダメですね。『800+200は?』と聞かれても、すぐには答えられない。耳から入ってきた情報を、頭の中で処理したり、文字に書き起こそうとすると、ラグが生じるようなイメージです」

次ページ学生時代、ノートを取ったことがない
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
  • ゴルフとおカネの切っても切れない関係
  • 360°カメラで巡る東京23区の名建築
  • ブックス・レビュー
  • 競馬好きエコノミストの市場深読み劇場
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
AI店舗の衝撃<br>トライアル、サツドラの挑戦

九州地盤のスーパーと北海道のドラッグストアチェーン。日本の両極で、AI・ハイテクを駆使した近未来店舗が誕生している。デジタルサイネージ広告、AIカメラ、スマートレジ、スマホアプリ……。AI店舗の最前線をルポ。