高校には進まず、地元の舗装会社に就職した
最近、本連載で発達障害のある人を取材する機会が急増している。なぜ、増えたのか? 発達障害があると貧困に陥りやすいのか? 彼らに話を聞きながら、私の中にはいくつもの疑問がわいた。
あるとき、ひきこもりの人たちを支援するNPO法人の関係者からこんな話を聞いた。
「先日、30代になる子どもが発達障害と診断されたという父親からの相談を受けたんです。ただ、どうにも話に脈絡がなくて……。もしかしてこの父親も発達障害かな、と感じたんです。でも、彼は会社員で、定年退職まで問題なく勤め上げているんですよね。
考えてみると、20年前、30年前は、例えば『腕はいいけど、不愛想な板金工』とか、『人付き合いは苦手でも、経理を任せたらピカ一』とか、そんな人がいたなと思って。昔は、多少変わり者と思われても、普通に社会や地域に居場所があった。でも、今は、学校でも職場でも、高い対人スキルばかりが求められるようになってしまいましたよね」
社会に余裕がなくなった、とこの関係者は言った。「大人の発達障害」が増えたのは、単に医療・診断技術が向上したからだけではなく、社会が変容したからなのか。
今回、話を聞いたケンジさん(33歳、仮名)も2年前に、発達障害のひとつ、注意欠陥多動性障害(ADHD)と診断された。この5年間、仕事に就けていない。
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