鈴木:僕らは「明日、潰れるかもしれない」という危機感を持ってやってきましたが、今までかなりの経験を積んできたので、直観とか経験とかって基本的に正しいと思っているんです。けれども、それを「正しいっ!」て大きな声で言える人が何人いるかっていったらなかなかいないんですよ。「こういう方向で行きましょう」「次は違う方向に行きましょう」って言えないのは困るので、それを言えるようにするための裏付け調査をたくさんやっていますね。
だから、Webの調査にしても基本的なアナログの調査にしても、調査に関しては人手と時間をかなりかけてきています。そのなかでは、もちろんファンの調査もありますが、ファンの満足度を調査したら意外に面白いことがわかったりしますね。
例えば、東京から時間とお金をかけて来てくれるお客さんは、裕福な人たちが多いっていう調査結果が出ています。だから、その人たち向けに高い商品を売ったほうがいいんじゃないかとか、いろいろなアイデアが蓄積していくわけですね。
それと同時に、デジタルの進化が目まぐるしくて、あまりコストをかけずにマーケティングの結果に基づいてビジネスができるようになった。僕らの戦略がちょうどタイミングよく、デジタルの進化の流れにはまったのだと思います。
地方の経営者はデジタルを魔法だと思っている
中原:ここからは、地方の経営者にとって示唆に富むお話が出てきそうですね。
鈴木:そうかもしれませんね(笑)。僕らはデジタルを魔法だとは思っていないし、デジタルっていうのはやればやるほど、むしろアナログの作業や工程、要員が必要なんですね。ところが、地方の経営者の皆さんはデジタルが魔法だと思っているから、SNSなどをやったりしているんですが、ただそれは自己満足でしかなくなるんですよ。
デジタルっていうのはやっぱり、その調査を次々としていけば、アナログでやっていることの何分の1かの投資で済むんですよね。けれども、経営の上にいる層がデジタルの投資に対してなかなか理解してくれない。だから、上のほうに理解してもらうために、調査に基づいた参考事例をたくさん説明していくわけですね。
先進的にデジタルを使いこなしているアメリカのプロスポーツチーム、例えばLAギャラクシーやシカゴブルズのデジタル担当とも話してわかったことは、彼らも昔から簡単に上からOKが出ていたわけではないんですね。
彼らだって、デジタルへの投資分をしっかりリターンできているのか、初めのうちはよくわかっていない。ただ、ファン層が増えていたり、観客数が増えていたり、そういう結果がリアルに出てくるから、デジタル投資への理屈はつけやすいってことだったんですね。だから僕らも、デジタルを駆使しないといけないなっていうことになったんです。
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