「サラリーマン大家」の時代は間もなく終わる これから「貸家の家賃」は大きく下落する

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貸家を建てたり、不動産投資をしても儲かるのは最初だけかもしれない(写真:june/PIXTA)

いまから貸家をどんどん建設して大丈夫なのか

『中原圭介の経済はこう動く〔2017年版〕』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

読者の皆さんの中には、「サラリーマン大家」を目指している方がいらっしゃると思います。「マンション1室か2室」というケースもあるでしょうし、自宅の土地などを生かして「アパートやマンション1棟経営する」という大きな目標を立てている方も、中にはいらっしゃるかもしれません。

2016年に入ってからのGDP(国内総生産)の内訳を見ると、唯一好調さを保っているのは住宅投資の分野です。これは、貸家となるアパート、マンションなどの集合住宅の建設が大幅に伸びているためです。国土交通省によれば、2015年の貸家の着工戸数は前年比で4.3%増えましたが、2016年の9月までの累計では前年同期比で9.7%増となり、その勢いを加速させているのです。

このような貸家の建設は、2015年1月に相続税の増税がなされたことでブームに火が付き始めました。もともと多くの資産家が貸家を建てて相続税の評価額を引き下げるという節税法を使ってきましたが、相続税の基礎控除額の縮小によって、相続税を納める必要がある被相続人の数が倍増するだろうといわれています。つまり、この節税法を使う人々の資産額のハードルが大幅に下がったというわけです。

2015年よりも2016年に貸家の建設が大きく伸びているのは、日本銀行のマイナス金利政策によって、借金が以前よりも容易にできるようになったためです。「トランプ大統領誕生」という新たな要素が加わったものの、長期金利のマイナスが常態化するなかで、銀行は今や普通の住宅ローンに比べ貸出金利が高めに設定しやすいアパート・マンション向けの融資を積極化しています。その結果として、景気が停滞しているにもかかわらず、アパートやマンションの建設に行き過ぎ感が表れ始めているのです。

最も注意を払うべきは、貸家の需要が高まっていないのに対して、供給が増え続けているというところでしょう。人口減少社会に突入した日本では、すでに全国で820万戸の空き家があり、その半数超は貸家となっているのです。これから本格的な人口減少社会が到来し、空き家が増え続けていくのは間違いないというのに、供給過多にある貸家の供給がさらに増え続けるという状況は、遅くとも10年後には、全国的に貸家の賃料が大きく値下がりすることを決定づけてしまっているといえるでしょう。

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