前回の記事『実質賃金下落の本質は国民への「インフレ税」だ』では、ご覧になってない方々のために簡潔に説明すると、景気回復を実感できない主たる原因は、国民の生活実感に近い「実質賃金」(厚生労働省の不正統計が発覚するまでは、政治家にもメディアにも注目されることがなかった)が、ずっと下落基調を続けていることである、という趣旨でした。
実質賃金については、2013~2015年の下落幅4.2ポイント(下落率では4.6%)のうち、およそ6割が輸入インフレによる影響、およそ4割が消費増税による影響であると試算しています。また3年間での下落幅4.2ポイントがリーマンショックをはさんだ3年間(2007~2009年)の5.2ポイント(下落率では5.4%)に迫っていたという事実は、決して無視することはできません。
国民に重要なのは物価変動の影響を加味した実質賃金
その結果として、実質賃金が大幅に下落した影響が残っていた2014~2016年には個人消費が3年連続でマイナスになったという事実も、深刻に捉える必要があります。個人消費が3年連続で減少したという珍事は、終戦直後にまでさかのぼっても2014~2016年の1回しかないのです。すなわち、名目賃金ばかりを見ていると気づかない、実質賃金と消費の強い相関性が解き明かされたというわけです。
そのような結果が出る前から、私は国民にとって大事なのは政府が重視する名目賃金ではなく、物価変動の影響を加味した実質賃金であると考えて、この連載でも実質賃金が2013年、2014年、2015年と下げ続けている過程において、繰り返し実質賃金の重要性を訴えてきました。
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