しかし現状では、農業と医療は国の規制がなかなか撤廃できないため、成長産業に化けるという道筋がまったく見えていないですし、観光だけは海外からの観光客が大幅に増加して絶好調のように見えますが、諸外国に比べて空港のインフラや関連予算が足りないというハンデをいまだに背負っています。政府が新しい成長産業をつくり、国民の所得を増やそうと本気で考えることができれば、こうした閉塞した状況も打ち破ることができるはずです。
農業・医療の振興策に今からでも真剣に取り組め
以上で申し上げた成長戦略は、安倍政権が発足する前からメディア等でずっと主張してきたことです。ですから私は、安倍政権による大規模な金融緩和(アベノミクスでいう「第1の矢」)には反対の立場を取ってきましたが、成長産業を育成するための成長戦略(同「第3の矢」)にはいつもエールを送ってきたつもりです(もっと詳しく体系的にまとめた内容は、拙書『日本経済大消失』(2012年)の中でも書かれています)。
アベノミクスという言葉が生まれてすでに6年以上が経っていて、物足りないインフラの中でも観光だけは順調に成長しているとはいうものの、農業と医療の岩盤規制はそのまま温存されており、成長産業として育まれている気配すら感じることができません。
政府はこの間、円安や株高をもたらそうとして金融緩和に過剰に依存しました。しかし10年単位の計画で農業・医療の振興策に真剣に取り組んでいれば、現時点で目に見える形で成果が出ていたのではないかと考えているところです。
「そんなことをいっても、今からでは遅いのではないか」という意見もあるかもしれません。しかし、今後の日本では否応なしに少子高齢化が加速度的に進んでいくので、国内の需要はどれだけ頑張っても縮小していくことが避けられません。
その一方で国外に目を向ければ、中国や東南アジアなど、世界で最も富裕層や中間層が増加している国々が地理的にも近く存在しているのです。これからは国内の需要だけではなく、海外の需要を大いに取り込むという視点をもって、成長産業を育てていく必要があるのではないでしょうか。今からでも決して遅くないはずです。
新しい元号である令和の時代において、私たち日本国民が豊かな生活を実感できるように、政府には少子化を緩和するための社会保障改革とともに、今回申し上げたような成長戦略を何としても実行してもらいたいと願っています。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら