アントラーズが茨城の田舎で70億円も売る理由 絶対に地方企業の「経営の教科書」にすべきだ

✎ 1〜 ✎ 115 ✎ 116 ✎ 117 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

鈴木:まず、カシマスタジアムの観客数は平均して2万人なんですが、うちのお客さんっていうのは、実は半径30キロのマーケット内から来ているのは全体の25%しかいないんですよ。マーケット外の茨城県や北関東から来ているのが25%、東京23区などの首都圏から来ているのが50%という構成なんですね。

なぜ首都圏から半数ものお客さんが来てくれるかっていうと、やはり強いチームに魅力があるから来てくれているんだと思います。だから、僕らは徹底的に勝ちにこだわってやってきたっていう結論になるんですね。

茨城まで時間とお金を使って来てくれるお客さんがいる。帰りの渋滞に巻き込まれて、すごいストレスをためて帰るお客さんがたくさんいる。だから、できるだけ勝って、気持ちよく帰ってもらいたいですよね。

「倒産しないためには、勝つしかない」という思考回路

中原:マーケットの外からお客さんが呼べているから、経営が成り立っているというわけなんですね。

鈴木秀樹(すずき ひでき)/1960(昭和35)年、青森県八戸市生まれ。自衛隊少年工科学校を経て富士学校戦車教導団へ。その後日本代表候補合宿へ召集され、日本リーグ2部の住友金属へ加入。現アントラーズ創設に携わり、一貫して事業部門を歩む。2002年のワールドカップはカシマ会場責任者を務めた。 2010年から現職。Jリーグマーケティング委員、筑波大学客員教授、茨城県サッカー協会副会長を兼務(撮影:今井康一)

鈴木:そのとおりです。でも、アントラーズができた25年前にはそんな発想はまったくなかった。親会社の住友金属工業(当時、現在の日本製鉄)や当時の鹿島臨海工業地帯に進出した企業の方針に沿って、町おこしをしようと始まったクラブチームですから。

そうした経緯があるので、「住友金属や鹿島進出企業がしっかりとチームをサポートしてくれるだろう」と思ってスタートしたら、意外にも「早く自立しなさい」と言い出したわけです。

「イニシャルコスト(初期費用)は出すが、ランニングコスト(運営費用)は何とか自分で稼げるようになりなさい」と。いきなり厳しい現実を突きつけられて、それでは何とか稼ぐしかないよねってことになって……。

秘訣といえるかどうかわかりませんが、25年間つねに「明日、潰れるかもしれない」と思って危機意識を持ってやってきました。「潰れないためには、勝つしかない」「勝つためには、何をすべきか」、アントラーズはそういった思考回路が身に付いているクラブチームだと思います。

次ページ「縮小均衡」から脱するためには?
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事