『ザ・ヒル』は中道で親トランプというわけではないが、こうした親トランプあるいはトランプに有利なオピニオンは直ちにトランプ派メディアによって要旨が転載されたり、再取材されたりする。ダーショウィッツの意見はすぐに保守系ニュースサイト『ニューズマックス』に掲載された(1月17日付)。
この『アトランティック』とダーショウィッツの論争の直後、トランプ派の保守系オンライン雑誌『アメリカン・シンカー』は「弾劾はトランプにとって有利だ」と題するコラムを掲載した。これは、極めてトランプ色が強い。
「(同陣営が)汚いやり方で大統領選挙に勝ったと言われているが、そうした主張は、実はオバマ政権とメディアが国民の投票結果を無視して、ヒラリー・クリントンを権力の座に就けようとした陰謀だったということが最近の対トランプ陣営捜査でわかった」。コラムはそう論じる。
「国家内国家」が存在するという発想
モラー特別検察官の報告が出ても、びっくりするようなことが明らかになるわけでない、と同コラムは言う。アメリカ人はフェアプレーを愛するから、ちょうどビル・クリントン大統領が不倫問題で責め立てられて、逆に支持率を上げたように、トランプもそうなる。かつてボクサーのモハメッド・アリが攻められ続けた末に、一挙に反撃して勝利したのと同じことが起きる。
「ディープ・ステート(国家内国家)は、細工をして不正行為を隠している。市民に公開されている文書の黒く塗りつぶした部分がそれだ。塗りつぶした部分が(トランプ)無罪を証明しているか、連邦捜査局(FBI)や司法省や中央情報局(CIA)などにとって都合が悪いか、犯罪行為を隠しているかのいずれかだ」
コラムは、こうした根拠薄弱な論理を積み重ねて、弾劾手続きの結果は失敗に終わり、トランプがさらに強い大統領になって再選に臨むだろうと結論付ける。
一種の典型的なトランプ派オピニオンだろう。トランプ支持者は、こうしたものを読んで気勢を上げている。『アメリカン・シンカー』は一定の高さの教育を受けていなければ、読めないようなオンライン雑誌だ。そうしたメディアに、ディープ・ステートといった陰謀論が顔を出す点に注意しておきたい。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら