ペロシ下院議長の慎重な姿勢にもかかわらず、弾劾手続きを求める声はあちこちで狼煙(のろし)を上げている。トランプ派メディアはどう反応しているのだろうか。
弾劾を求める声が高まる中、『ブライトバート・ニュース』は1月14日付けで、新興のオンライン調査会社モーニング・コンサルトによる世論調査結果を掲載。トランプ弾劾を新会期に入った連邦議会の「最優先課題」にすべきだという人は、民主党支持者では39%いる。だが、アメリカ国民全体では23%だと報じ、「民主党支持者には平均的アメリカ人とは際だった差がある」と論じた。民主党支持者は「普通ではない」と示唆したわけだ。
同じ趣旨でも質問でまるで違う回答に
モーニング・コンサルトは信頼できる調査機関であり、数字にウソがあるわけではない。ここに現れているのは、調査の質問の問題だ。「最優先事項(top priority)」と聞けばこうなる。ブライトバートは、そうした調査結果をうまくすくい上げて使って、民主党員は異常という印象をつくり、トランプ支持者を鼓舞したわけだ。
反トランプのCNNが12月半ばに行った世論調査では、トランプを弾劾して退任にまで追い込むべきだという人は43%、そこまですべきではないという人が50%。弾劾賛成は漸減しているが、それでも40%を超える。ブライトバートの「弾劾が最優先事項」と答えた23%に比べ、大きな差がある。
同じような趣旨のことを問い掛けているが、世論調査のトリックで質問によって結果が異なり、まったく違った印象が生まれる。右派左派それぞれのメディアは、都合のいい結果を都合よく解釈する傾向がある。一般視聴者・読者は左右どちらか自分の好みのメディアにしか接しない傾向が強いから、市民の意識はますます分極していく。
『アトランティック』の「トランプを弾劾せよ」の呼びかけ自体への反応はどうだろうか。反論の中で有力だったのは、ハーバード大名誉教授の法学者アラン・ダーショウィッツが1月17日付の政治専門紙『ザ・ヒル』に寄せたオピニオンだ。
ダーショウィッツは著名な学者だが、その政治的立場はリバタリアン(自由至上主義)的で左右にとらわれないところがある。時にトランプ支持の意見も吐く。同氏はアトランティックの主張に対し、「トランプの統治が悪いから、残り任期2年間を弾劾手続きで身動できないようにさせろ」と言っているようなもので、それこそ憲政にもとると批判した。悪い統治を止めさせるために大統領任期と選挙の制度がある、という憲法起草当時の議論を紹介している。
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