「たばこはカッコいい」が通用した昭和の記憶 「子供の喫煙」や「電車内喫煙」にも寛容だった
2016(平成28)年7月28日、日本たばこ産業(JT)が毎年発表している「全国たばこ喫煙者率調査」において、男性の喫煙率が初めて3割を切ったと報告された。男女合計の喫煙率も19.3%と過去最低になった(2018年の調査では17.9%とさらに下落)。
喫煙者なら身に染みてご存じのことだろうが、現在の日本は交通機関、職場、飲食店などの室内はおろか、都市部では路上すら禁煙となっており(自宅のベランダですら隣人から煙たがられるご時世だ)、昭和時代を生きてきた喫煙者なら、なんとも肩身の狭い世の中になったと嘆いていることだろう。
この喫煙者率調査は、1965(昭和40)年(当時は日本たばこ産業の旧組織である専売公社が調査)から始まっており、現在までの喫煙者率のピークは、調査開始の翌年である1966(昭和41)年。男性喫煙率はなんと83.7%と高く、年代別に見ていちばん高い40代にいたっては87.3%と、健康に問題のない男性はほとんどが喫煙者だったといっても過言ではなさそうだ。一方で、女性の平均喫煙率は同じく1966年がピークで18.0%。2018年が8.7%だったので、それほど大差はない。
たばこが「悪影響」とされなかった時代
ここまで多くの喫煙者を生み出していた理由としては、「タバコは健康に悪影響」という情報が一般に知られていなかったこともある。健康先進国だったアメリカですら、公衆衛生局がタバコの危険性を訴えた「喫煙と健康に関するリポート」を最初に出したのは1964(昭和39)年のことだ。
そして、どこでもタバコが吸えたという社会環境も、喫煙者率が高かった要因であろう。タバコを吸うことに対して、ほとんど後ろめたいことなどなかったのだ(ひと昔前の海外旅行ガイドブックには、海外でタバコを吸うときには、周りの人に「吸っていいか」と尋ねようと書いてあった。それだけ日本では喫煙時に周囲を気にしなかったと言える)。
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