「たばこはカッコいい」が通用した昭和の記憶 「子供の喫煙」や「電車内喫煙」にも寛容だった
2019年には東海道・山陽新幹線の旧型700系が引退することから、喫煙車両を全廃することになりそうだが、新幹線が開業した1964(昭和39)年当時は全車が喫煙車両だった。非喫煙者や子どもが乗っているなか、窓を開けられない新幹線の車内は、モクモクと煙っていた(新幹線に初の禁煙車が設定されたのは1976年のこと。しかも自由席車に1両のみ)。また、東海道本線や山陽本線といったJR(1987年以前は国鉄)の中距離電車では、向かい合わせのボックス席の肘置きに灰皿がついていて、一部区間を除きタバコが吸えた。
中・長距離列車だけでなく、いちおう禁煙ではあったが、通勤電車であっても車内で喫煙する人はいた。日映科学映画製作所が公開している『こどもは見ている』という映像(フィクション)では、ボックスシートではない横並びの席の電車(東京の山手線や大阪環状線など)に乗っている男性が、新聞を読みながら平然とタバコを吸っているシーンがある。
その隣にはその男性の女児が座っており、その子の思いを声にして伝えている。
「うちのお父さんは、とてもいいお父さんだけど、電車のなかで、禁煙ですとスピーカーがいっているのに、平気でタバコを吸っています。こういうところは、私は、いけないと思います」
映像の内容は、こういうことはマナー違反だからやめましょうというお芝居であるが、実際に吸っている人がいたから、このような場面を取り上げているわけだ。
たばこは「オシャレな存在」だった
電車内で吸えたのなら当然、駅でも吸えた。駅のホームは喫煙所ができて制限されるまでは駅のホーム全体が灰皿代わりだった。タバコのポイ捨てに対して喫煙者は罪悪感を持っておらず、電車が近づいてくると吸い殻を線路に投げ捨てるなんて光景も当たり前のように目にした。ラッシュアワーだろうが、電車を降りたらタバコに火をつけ、プカプカふかしながら階段を降りて改札を通った。さらに、そのまま地下鉄の駅まで下りていったものだ。
飛行機も国際線、国内線ともに喫煙席が設けられていた。機内は空気が乾燥していることもあり、喫煙席でひと眠りでもすると喉をやられることが多かったように記憶している。世界の多くの航空会社が全面禁煙を始めるのは1998(平成10)年ごろから。案外最近のことだ。
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