逆転した理由には、相互補完されたストーリーであったことも大きいでしょう。俳優・山﨑賢人が演じる主人公・旺太郎が地上波の『トドメの接吻』では「毎週死ぬ」という設定。これに対して、Huluのスピンオフではその主人公が死んだ後の世界が描かれています。
プロデューサー鈴木亜希乃氏の公式コメントには「これは、ただのスピンオフ作品ではありません。タイムリープというSF設定を生かし、同じ時間・シチュエーションでありながら、まったく違う2つの物語が進行し、まったく違う結末を迎えるという、これまでにはない新しい試みです」という説明があります。
ストーリー設定を生かした結果ゆえ、「おまけ」どころか、『トドメのパラレル』は配信スピンオフドラマの成功事例につながりました。その背景には配信サービスの利用者増加もあるでしょう。また、単なる偶然でもなさそうです。
「先行展開」を利点に会員数は右肩上がり
Hulu日本版は言うまでもなく日本テレビグループの傘下です。2011年に日本に上陸後、日本テレビが2014年から事業を継承しました。有料会員数は約178万件(2018年9月末現在)に上ります。テレビ局傘下のSVODサービスが乱立状態にあるなど逆風要素もありますが、先行展開を利点に会員数は右肩上がり、着実に伸ばしています。
この会員数の伸長ぶりは、日本テレビグループ全体でコンテンツ戦略が練られていることにも起因しているようです。「地上波連続ドラマと同日連動したHuluオリジナルストーリーが好調。今後も積極的に実施していく」と、決算説明会で方針を示しています。昨年11月に千葉・幕張メッセで開催された放送機器展「Inter BEE2018」でもこの日本テレビとの連動戦略について説明されました。
「Inter BEE2018 CONNECTED」セッションに登壇したHJホールディングス取締役編成部部長高谷和男氏は「日本テレビとの連動の1つが、独占的に番組キャッチアップとスピンオフを配信すること」と述べ、スピンオフドラマは「パラレル進行型」や「未公開型」など、その時々のドラマの企画に応じて中身と宣伝を練っていることを明かしました。
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