「三女」になった里子が家族に溶け込めたワケ 新しい家族にいつしか本音が入れるように

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「まあね。私たちがただあんたをいじめて言ってるわけじゃないってわかってる?」(次女)

「うん。みんなに強く言われた時は落ち込んでも、また同じ問題が起きたときに『あのアドバイスは私のために言ってくれてたんだ』って気づくことができるようになった、かな」(三女)

家族会議はお互いを守り合う「膜」になる

こんなふうに、姉妹たちが議論するのを、齋藤さん夫婦は笑って見守っている。

家族会議は相手を言い負かすためではなく、家族の弱さを出し合うためにある、と竜さんは言う。冒頭にあったようにケンカがテーマの会議では、両親を含めた全員の行動の癖や困った行動を客観的に話し合うことも多い。

「上下関係がなく、親から子、姉から妹への一方通行ではない会話をできることはすごく大切ですね。親にとっても子どもたちからの率直な意見を聞けることはありがたいことですよ。親だからといってえらいわけじゃないし、性格上の問題もある。それを子どもたちはちゃんとわかってくれていて、互いの弱みを知ったうえで、状況を把握し、解決案を出してくれるようになった。これはすごいことですよね」(竜さん)

直巨さんは、家族会議という場所を持ち続けることがお互いを守り合う膜になる、と言う。

「夫婦も実の親子でも里親子でも、結局は他人。家族でも仲良くするためには馴れ合いではダメで、話し合いはやっぱり大切だと思うんです。それにいずれ社会に出たときに自分の意見が言えないようでは、弱い立場に陥るリスクだってある」

「家族会議を通じて、正しく情報を得て、周りに流されず自分の意見を伝える準備をすることが、自分を守る最大の危機管理になると思っています。娘たちに関しては、この10年で相手を傷つけずに必要なことを伝える土台ができてきました。だからきっと社会に出しても大丈夫、それだけの知恵や強さを身につけてきたかな、と誇りに思っています」(直巨さん)

家の中に「他人」が集まってできたのが家族。その社会の中で、弱さを見せ合いぶつかりながらも、お互いを思い合う練習をする場所が家族会議。家族会議は、社会に出るために必要なスキルと言えるだろう。

玉居子 泰子 編集者、ライター

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たまいこ やすこ / Yasuko Tamaiko

1979年生まれ。東京外国語大学卒業後早川書房に入社。主に翻訳書籍の編集を行う。 2005年にベトナムに移住すると同時にフリーランスに。編集・翻訳・ライター業のほか企業通訳を務める。2007年帰国後もフリーで活動を続ける。テーマは、育児・教育、妊娠・出産、育児の悩み、家族のコミュニケーションなど。主な寄稿先は『AERA』、『東京人』、『クーヨン』、『FRaU』、日経DUAL、JBpress、soar-worldなど。過去の仕事一覧はこちら
 

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