「三女」になった里子が家族に溶け込めたワケ 新しい家族にいつしか本音が入れるように

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「『本当のことを言っていいんだよ』と笑って言うと、本当にいちばん好きなのは、乳児院で赤ちゃんの頃から担当してくれていた先生だと打ち明けてくれて。それはそうですよね、ああ、やっぱり赤ちゃんから育ててくれたその人が”心のママ”なんだ、と納得しました。そして自分を産んでくれた人は”お母さん”だと言う。『だったら私のことはなんて呼びたい?』と尋ねたら『なおさんがいい』と言ったんです」(直巨さん)

2人の姉たちも、三女が突然両親を「ママ/パパ」と呼ぶことは、どこか両親を”取られた気分”になると正直に伝えた。だったらなおさら無理せず、「なおさん・竜さんでいいよね」と決まった。

三女が転んだ次女に「知らん顔」

「実の親のことや、里子であることなど『真実告知』をいつするか、という問題は里親家庭にはありますが、うちでは最初から情報は子どもたちに伝えています。その上で家族としてどうありたいか、どうしたら仲良くできるかを話し合ってきた感じですね」(竜さん)

だが三女が本当に家族に溶け込むには、まだまだ時間が必要だった。

里子になってすぐの頃、三女はよく夜中に起きて直巨さんのベッドのそばで呆然と立っていたこともある(筆者撮影)

こんなエピソードがある。ある日、かけっこの途中で派手に転んで血を流した次女を見て、三女は何事もなかったかのように次女を置いて走って行ってしまった。

「すごくびっくりしたんですよね。3、4歳ともなれば姉妹や友達が転んで泣けば『大丈夫?』って話しかけますよね。でも完全に知らん顔だった。なぜだろう、と思って、みんなで話し合ったんです」(直巨さん)

”ケガをした子をなぜほったらかしにできるの?”そう問い詰めるのではなく、直巨さんは”どうして助けなかったのかな?”という純粋な疑問として家族会議にかけた。三女の答えはこうだった。

「それは私の仕事じゃないから。先生の仕事だから」

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