「三女」になった里子が家族に溶け込めたワケ 新しい家族にいつしか本音が入れるように

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子どもがたくさんいる乳児院では、何か問題が起こった時、当然職員が対処することが多い。下手に子ども同士で解決しようとすると、”先生の仕事”を邪魔することにもなってしまう。その経験が行動の原点にある、ということがわかった。

「ああ、そうかって。やっぱり何もかも違うんだってわかったんです。大人と関係を作ることは彼女にとって生きるために必要なことだったけれど、子ども同士の関係や対話を築くことはそうじゃなかった。でもこの先、ずっと、私たち夫婦が死んだ後もこの子をいちばん近くで支えてくれるのはきっと2人の姉ですよね。姉妹と仲良くすることは、あなたを守ってくれる人を増やすため、あなたを守るためなんだよ、と伝えました」(直巨さん)

「姉たちも最初は三女の理解できない行動があると、『なぜ助けてくれなかったの?』と怒りの感情を持ってしまっていた。でも、会議で冷静に状況を話し合うことで、理由があったんだ、とわかる。そうすると『そうだったんだ。でもそういう時は近くに来て”大丈夫?”って言えたほうがいいよ』などとアドバイスしてくれるようになりましたね」(竜さん)

三女も少しずつ本音を言えるように

ケンカもするし、お互い言いたいことも言い合う。それでも最後は、相手のことを考えてアドバイスをする。そんな家族会議をこの10年間繰り返していくうちに、三女も家族の話を聞き、少しずつ本音を出せるようになってきたという。

「昔は、会議中でも、怒られたり意見されたりするとすぐ『わかってもらえてない』『自分ってかわいそうモード』に入ることが多かったんです。納得できなくて、本当の親ならきっとこうしてくれるはずって何か思ってて」(三女)

「でもそれってあんたの想像上の親だよね。親ってそんなに理想的じゃないよ」(長女)

「うん。そう。そうなんだよね。それはわかってきた。だから、今は立ち直るのが早くなった気がする。ちゃんと話を聞くモードに切り替えられるようになってきたでしょ」(三女)

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