会社の閉塞感を打破する「社内FA」の可能性 有能な人ほど同じ部門に固定される悲劇

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ちなみにこの制度は日本で導入されたのは1990年代。一方でアメリカでは遥かに以前となる1970年代から長く活用され、たくさんの選手がFAで移籍と高待遇を得てきました。筆者は日本でFAをもっと活用してさらなる成功を得るケースが増えるべきと思います。それが、選手の意欲を高めると思うからです。

同じように企業でもFAの活用は増えていくべきではないでしょうか。取材した専門商社に勤務している中堅社員から「うちの会社にもFAの仕組みがあれば社内が活性化するのに……」と嘆く声を聞きました。その理由は社内で活躍している社員に限って異動ができず、待遇も周囲と大差がない状態だから。職場の閉塞感にさいなまれていました。

その会社では新卒・中途採用のどちらで採用された社員であっても、事業単位の人事管理が中心。そのため、活躍している社員、将来が嘱望されている社員は事業部門の中に抱え込まれて、部門をまたいだ異動がほとんどありません。

同じ事業部門に長く勤務していることを望む人はたくさんいます。人間関係も円滑で、仕事はスムーズにできるかもしれません。ただ、同じ職場での経験だけでは十分には成長できないと考える人もいます。たとえば、別の業界での人脈を広げたい、あるいは別の事業部門で新たな資格取得してスキルアップをしたい人もいます。

さらに別の部門において自分のキャリアをどのように評価・処遇してくれるのか? 転職はしたくないが、社内で別の部門の役員に聞いてみたいと思う人もいるはずです。

ところが、この会社には要望をあげる仕組みがありません。せめて、要望をあげる仕組みくらいはつくってはどうかと人事部に聞いてみたのですが、

「うちの優秀な社員は事業部門内で育てたのだから異動なんて認めません」

との回答。でも、それでいいのでしょうか? この記事ではみなさんと会社員におけるFA活用を考えてみたいと思います。

まずは要望をあげる環境づくりとして、会社が取り組むことがあるのが自己申告制度です。一定の時期に社員から「異動の希望はありますか?」「どのような部署に異動したいですか」と要望を聞いて、その要望がかないそうな社内の状況であれば取り組む仕組みです。

多くの会社が導入しており、社員の思いをすくい取る窓口としては有効と言えます。ただ、会社が行う人事で、個々人の要望をいちいちかなえていては何も進まない……と、現実問題として要望には応えられない状況になっている会社が大半。

上司という名の弊害

取材したシステム系会社のエンジニアには、別の事業部門に異動して経験を広げたいと考えている優秀な社員が何人もいました。新たな環境で自分を成長させたい、スキルを高めるためには職場を変えるべき……などさらなる高みを目指したいと考えているのです。

そんな要望をすくいあげる仕組みとして、自己申告制度が社内にはありました。ただ、希望がかなう人事が行われる機会が少ないうえに、活用すれば大きな弊害に巻き込まれる可能性があるとのこと。

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