鈴木会長引退を招いた「人事案否決」の舞台裏 セブン王国に亀裂、瓦解へと向かうのか
「1カ月ちょっと前、鈴木(敏文)会長から、社長を交代するように、という話があった。交代の理由を説明されたが私は理解できなかった。2009年に社長になり、精いっぱいやってきた。5期連続最高益。社内制度の面でも、みなし残業の問題、コンプライアンスへの対応などに取り組んできた。背任行為や違反行為もない。体も精神も健康だ。(社長として)やらなければいけないことはまだある」
丁寧だが、強い意志を感じさせる口調。そして「明日の取締役会で、申し上げたいことは申し上げるつもりだ」。
4月6日夜、本誌の取材でこう打ち明けたのは、セブン&アイ・ホールディングス傘下で、コンビニエンスストア事業を手掛けるセブン-イレブン・ジャパンの井阪隆一社長(58)だ。
社長交代は納得できない
そして翌7日。セブン&アイの取締役会は、セブン王国の総帥、鈴木会長(83)が考えた、井阪社長を交代させる人事案を諮った。
井阪氏が本誌に語った内容は、鈴木会長に反旗を翻すに等しい行為だ。しかし、自身の社長交代に納得できない井阪氏は、取締役会で自分の考えを表明せざるをえなかった。
井阪氏は鈴木会長についてこうも語っていた。「鈴木会長の哲学の影響を受けた。尊敬しているし、それはこれからも変わらない。ただガバナンスをもっとしっかりしていかないといけない。みんなが理解できる意思決定の判断基準が必要だ。ステークホルダーは本当に多いのだから」。