鈴木会長引退を招いた「人事案否決」の舞台裏 セブン王国に亀裂、瓦解へと向かうのか

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背景にあるのは、鈴木会長が世襲をしようとしているのではないかという疑念だ。

サード・ポイントは次のような危惧を書簡で示していた。鈴木会長は、自らの二男で最高情報責任者(CIO)の鈴木康弘氏(51)を将来、コンビニ事業会社の社長に就けて、やがてセブン&アイのトップの座も譲ろうとしているのではないか。そのような「後継者の選考に透明性が欠ける、あるいは血縁要素が介入してくるのであれば、株主への利益に反する」。

本誌が2月中旬にインタビューした際、鈴木会長は息子の康弘氏について、次のように語っていた。

「僕が入れ知恵したって、そんなもの続くわけがない。そうすると、かえって本人も気の毒なんだよね。親が一生懸命やって引き回す場合もある。だけど僕は、そういうことは絶対にしない」

これら鈴木会長の言葉からは、康弘氏に世襲させようという意志は伝わってこない。ところが、サード・ポイントは、井阪社長交代案を3月中に把握している。世襲案も相応に根拠を持って指摘したと考えられる。

取締役会で生じた亀裂

セブン&アイの今後はどうなるのか。鈴木会長の引退は4月7日に突然決まったこと。後任は「これからみんなで相談して決めてもらう」(鈴木会長)。セブンはグループ売上高10兆円超を誇る流通業界最大手級。トップが不安定な状態が長引けば、グループ全体が漂流しかねない。

特に今回の人事案の取締役会決議は賛成7、反対6、白票2と割れた(賛成が過半数に達せず不成立)。取締役会に亀裂が生じた可能性は高い。

収益柱だったコンビニ事業も、好業績を継続できるか懸念が残る。社長人事を巡って混乱した後も従来どおりの事業運営ができるか不透明だ。サード・ポイントが書簡で指摘していた、低迷するイトーヨーカ堂をグループから分離させることも、再び検討課題に浮上しかねない。

盤石とみられていたセブン王国に入った初めての大きな亀裂。このまま瓦解へとつながってしまうのだろうか。

「週刊東洋経済」2016年4月16日号<11日発売>「核心リポート01-2」を転載)

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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中山 一貴 東洋経済 記者

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なかやま かずき / Kazuki Nakayama

趣味はTwitter(@overk0823)。1991年生まれ。東京外国語大学中国語専攻卒。在学中に北京師範大学文学部へ留学。2015年、東洋経済新報社に入社。食品・小売り業界の担当記者や『会社四季報 業界地図』編集長、『週刊東洋経済』編集部、『会社四季報』編集部、「会社四季報オンライン」編集部、『米国会社四季報』編集長などを経て2023年10月から東洋経済編集部(編集者・記者、マーケティング担当)。「財新・東洋経済スタジオ」スタッフを兼任。

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