鈴木会長引退を招いた「人事案否決」の舞台裏 セブン王国に亀裂、瓦解へと向かうのか
こうした井阪氏の思いが通じたのか、7日の取締役会で井阪氏が社長を退く人事案は成立しなかった。
この社長交代人事については、実は社外からも異議が唱えられていた。米ヘッジファンドのサード・ポイントだ。
株主の利益に反する
同社はかつてソニーやファナックに投資し、経営改革や株主還元を強化するよう訴えた“物言う株主”として知られる。2015年7~9月に5%未満のセブン&アイ株を取得。3月下旬にセブン&アイの全取締役へ1通の書簡を送った。冒頭にはこう記されている。「株主の利益に反し、縁故主義に基づくような行動を起こすのではないかと、大きな懸念を持っている」。
その懸念こそが井阪社長の退任人事だった。サード・ポイントは書簡で井阪氏について、「その功績と株主利益へのコミットメントにおいて高く評価されるべきであり、降格されるものではない」「鈴木会長の後継候補として十分な人物」と評している。
確かに井阪氏を経営から外すことは、近年のコンビニ事業の攻勢を考えると、理解しがたい。セブン‐イレブンは直近の2016年2月まで、43カ月連続して既存店売上高が前年同月を上回っている。日販(1日当たり1店売上高)も、競合他社に10万円超の差をつけており、目下、独り勝ちの状態が続いている。
そんな井阪氏を社長から交代させることは、セブン&アイの取締役会も、さすがにできなかった。