「攻殻機動隊」をイタリアに届けた女子の現在 「ジョジョ」など翻訳した数、実に600超!

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難しいのはユーモア。たとえば作品に、タモリの話が出てきたとき、そのまま翻訳しては、イタリア人に通じない。かといって、タモリの説明をすると長くなってしまう。そこで、ストーリーに関係なければ、イタリアの有名タレントに置き換えることもあるという。

「翻訳家は原作を忠実に伝えないといけないけれど、ときに臨機応変に考えることも必要。私たちは漫画の“忍者”なの。うまく仕事をすれば誰も気づかない。でも、間違ったらすぐ気づかれちゃうけどね」と詩文奈さんはほほ笑む。

まだ夢は捨てたわけじゃない

現在、月に約3冊の単行本の翻訳のほか、映画やドラマ、アニメなどの翻訳も行っている。そのほか、翻訳学校での講師やコラムの執筆、テレビのコメンテーターなど、マルチに活動している詩文奈さん。だが、子どもの頃に目指していた漫画家への夢も、まだ持ち続けているという。

「忙しくて漫画はもう10年くらい描いていないけど、まだ夢は捨てたわけじゃないの。引き出しの中の、いつでも取り出せるところにしまってあります」

最後に詩文奈さんは、漫画家になる以外にも、大きな夢があると明かしてくれた。それは、教育現場で漫画やアニメを使ってもらうこと。勉強は大事だけれど、楽しくなければ身に付かない。その点、漫画やアニメは最適なコンテンツだと話す。

「『うる星やつら』には、弁天様というキャラクターが出てきます。弁天様は、七福神という神様の一人。漫画を見た子どもが、『弁天様って何だろう?』と調べることで、宗教の勉強になる。幕末を舞台にした『るろうに剣心』は日本史の勉強に。『ベルサイユのばら』は、フランス革命について知ることができる。漫画やアニメを通じて、子どもたちの好奇心を刺激して、楽しく効果的に勉強してほしいですね」

漫画やアニメを通じて、これまでにたくさんの知識や経験を得てきた詩文奈さん。伝道師として、今度は自分が子どもたちに伝えていきたいのだとお茶目に笑う。

漫画との出会いによって人生が動き、天職を見つけた詩文奈さん。これからも新しく生まれるmangaを、たっぷりの漫画愛とともに世界中の人々に届けていくことだろう。

肥沼 和之 フリーライター・ジャーナリスト

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こえぬま かずゆき / Kazuyuki Koenuma

1980年東京都生まれ。ルポルタージュや報道系の記事を主に手掛ける。著書に『究極の愛について語るときに僕たちの語ること』(青月社)、『フリーライターとして稼いでいく方法、教えます。』(実務教育出版)。東京・新宿ゴールデン街の文壇バー「月に吠える」のオーナーでもある。ライフワークは愛の研究。

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