悪性リンパ腫という病気がある。血液のがんと呼ばれ、俳優の高倉健さんや、元小結・時天空の間垣親方らの命を奪った病気だ。まさに今、その病と闘いながら、リングに上がっているプロレスラーがいる。プロレス団体・UWFなどで活躍した垣原賢人(まさひと)さんだ。
“カッキー”の愛称で親しまれた垣原さんは、UWF退団後にUWFインターナショナル、キングダム、全日本プロレス、プロレスリング・ノア、新日本プロレスといった団体を渡り歩く。
2006年に引退した後は、大好きなクワガタを広めるための活動を開始。第2の人生を歩み始めたが、2014年に悪性リンパ腫と診断された。現在は小康状態が続いているが、完治したわけではなく、いつ悪化してもおかしくないという。
そんな垣原さんは2017年8月、復帰興行を開催。プロレスラーとして再びリングに立った。2018年8月にも興行を行った。闘病中でありながら、垣原さんはなぜリングに上がり続けるのだろうか。
UWFに入りたくて県内トップの進学校を中退
垣原さんは1972年、愛媛県新居浜市で生まれた。2つ上の兄が大のプロレスファンで、子どものころから一緒にテレビを見るうち、その魅力にハマっていった。中学校に進むと、プロレスラーの前田日明さんや高田延彦さんが立ち上げたUWFに夢中になった。高校は県内トップの進学校に入ったものの、UWFに入りたくて中退することを決意。打ち明けると、母親には泣かれ、担任からはプロレス雑誌を投げつけられた。
「うちの家族は父親がいないんですね。反対されるのは当然だと思いました。先の見えない世界に飛び込んで大丈夫なのか、高校くらいは出てほしい、と。それでもコツコツ思いのたけをぶつけて、最終的に母や担任が根負けしました」
人生に保険を掛けるのが好きでない、という垣原さん。学校に通いながらプロレスラーを目指し、実現したら中退する、という“現実的な”選択肢は考えていなかったという。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら