帯同休職制度はありがたかったし、マキコさん自身当初は戻るつもりだった。こうして休職制度があっても、結果的に退職を選ぶ人も珍しくない。
上記の一般事務のルミさんも、「今回は2年とわかっているのでいいのですが、今後夫に期間の読めない駐在の可能性があるので、そのときについては不安です。何回も休職ができるのか、期間が一定期間を越えたら帰国するか退職するか選ばないといけないのか……」とつぶやく。
企業側も無尽蔵に休職を拡大できない。夫の会社側での転勤の期間の上限や回数が読めないなかで、もともとの仕事の特性や保活が「夫に単身赴任してもらって母子で帰国し、仕事に復帰する」をためらわせる。
再雇用についても同様だ。会社を辞めて夫の転勤先の東南アジアに帯同しているアイさん(仮名)は、元の勤め先に再雇用制度はあるものの、「使いにくい側面がある」と話す。
「復職のタイミングの時期が人事異動のタイミングがある時期に限られており、数カ月前に申請し、面接をして、再雇用されるかどうかが決まるのが復職の直前なんです。小さい子どもがいる場合、いちばん入りやすい4月入園を目指そうとすれば12月に認可保育園に申し込む必要があります。でもその時には求職者扱いとなってポイントが減ってしまい、保活を乗り切れるか心配です」
企業が契約している託児所もあるが、育休からの復帰が優先となり、再雇用の人にはハードルが高い。アイさんは、保育園対策のために0歳児の時点で帰国するかどうか迷ったという。
「復職のタイミングを柔軟にする、プロセスももっと短くする、あるいは早くに復職内定を出す、会社提携保育園の枠は育休復帰者も再雇用内定者も同様に扱う……などと改善してくれたら、だいぶ使いやすくなると思います」
再雇用の場合、通常は退職金やそれまでの業務に対する評価がすべてリセットされるほか、入社しばらくは契約社員などの形態で待遇が正社員と異なるなどのケースもあり、デメリットが大きいと考える女性もいる。企業が休職制度や再雇用制度を生かして、人材を迎え入れるには細かい規定の改善が必要そうだ。
帯同はする、でも元の会社で働き続ける
同時に、確実に増えている事例が、「帯同はするが、元の会社で働き続ける」というパターンだ。企業にとっても、休めるようにする、復帰できるようにする……よりも、稼働してもらう方法を考えるほうが合理的に見えてきたのかもしれない。
東京で外資系医療機器企業に勤めていたケイコさん(仮名)は、2016年から東アジアの某都市で業務をしている。別の会社に勤める夫の転勤が決まり、会社に相談すると、駐在員として赴任の辞令を出してくれた。夫側の会社は前向きではなかったため、ケイコさん側の会社の人事が社長名で「御社(夫側の会社)に迷惑が掛からないように自社が全責任を負う」との覚書を提出してもらったという。
渡航時の引っ越し費用も家族の分は夫の会社から補助が出るが、ケイコさんの荷物は別扱いにするなど、手続きは煩雑に。「渡航までがすごく大変で、くじけそうでした。何度もやっぱり辞めますと自分の会社に言いに行ったのですが、人事になだめられて、いろいろと励ましてもらってなんとか渡航にいたりました」。
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