富士フイルムはなぜ、大改革に成功したのか

古森重隆・富士フイルムホールディングス会長・CEOに聞く

──成功する新規事業を見極めるのは難しいのでは。

会社には、技術基盤、財務基盤、ブランド力、質の高い社員という経営資源がある。まず自分たちがどのような技術や資源・強みを持っているのかを整理した。そして、それが適応できる市場、商品は何があるか。既存市場と新市場、既存技術と新技術で4象限のマトリックスを作り、それぞれの事業を区分けした。

こうして、液晶用フィルムに代表される高機能材料事業や、子会社の富士ゼロックスが手掛ける複合機などドキュメント事業、後に医薬品や化粧品にも拡大したメディカル・ライフサイエンス事業などの6分野を新たな成長の軸に据えた。

──05年度と09年度の2回、それぞれ5000人規模の人員削減を行うなど痛みも伴いました。

もちろんやりたくはなかったが、やらざるをえなかった。巨大な固定費を抱えたままでは到底やっていくことができない状況にあった。

会社が潰れてしまえば何も残らない。当時約7万人いた全社員が路頭に迷うことになるし、富士フイルムが世の中に提供してきた価値を継続できなくなってしまう。「生命の尊厳」は会社にもいえる。最終的に決断し、社員にその意図をきちんと伝えていくことはリーダーの役割だ。

──本当に強い企業とは、「自ら変化を作り出せる企業」だと指摘しています。

21世紀に入り、いろいろな条件が大きく変化する時代になった。為替や資源価格。こういったものが激しく動けば経営も揺さぶられてしまう。さらに、新興国という、不確定要因が大きい市場の存在感が増している。優良企業だったとしても、変化にさらされたときに対応できなければ衰えていくし、やがて滅びてしまう。まずは変化に対応できなければいい企業とはいえない。

しかし、変化に対応するだけなら受け身の姿勢だ。変化を予測し、先取りする。あるいは変化を作り出せればもっといい。メーカーでいえば、他社にはない技術で先進的な製品を出していくということが大事だ。社内でも「オンリーワンかナンバーワンを作る会社であり続けよう」と言っている。

たとえば医薬の分野では、今までなかった薬の創出を目指している。患部に必要な量だけタイミングよく届けられれば、分量を減らして、体への負担を軽減できる。

──足元の経営環境については。

日本は規制が厳しい。医薬品の認可の期間は米国より大幅に長い。医療機器に関してもさまざまな制約がある。このような規制の緩和はぜひやってもらいたい。

また、エネルギーのコストが極めて高い。業種にもよるが、エネルギーのコストが人件費に匹敵するくらいに高騰している工場もある。日本はガスや石油を輸入するしかない。原子力発電をどうするかも含めて、今後のエネルギー政策を考えなくてはいけない。

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