──アベノミクスで頑張っても、日経平均株価は上がりにくくなっているのですか。
簡単には2万円台に乗せないと見ている。この間、日経平均は三つの基本的な問題を抱え込んでしまった。「三つの罪」を犯したからだ。それは、算出している日本経済新聞社も気がついているはずだ。
──三つの罪?
順次説明したいが、わかってもらうには、そもそもダウ式平均株価の計算方式の説明がいる。
手作業での計算の時代に始まったから、ダウ式平均株価の計算の仕方は単純だ。選定された構成銘柄の株価を足して、構成銘柄数で割る。
これを出発点にした単純算術平均タイプだ。ただ、連続性を確保するために工夫がされている。
構成銘柄の株式分割や入れ替えが発生すると、分子の株価合計が断続的に変化する。それによる平均株価の変化が生じないように分母(=除数)を修正する。
2012年末現在、日経平均の除数は、これまでにそのような修正が続いているので、構成銘柄数そのものの225ではなく、そのほぼ9分の1の約25(24.975)になっている。
──構成銘柄採用に関する問題点を指摘しています。
1980~90年代に高成長を遂げた企業を構成銘柄に適切に採用しなかった。そのため、特に90年代の「失われた10年」において、日経平均は低迷の度が増した。
たとえばダイエー(現・イオン傘下)は、70年に三越(現・三越伊勢丹ホールディングス)を抜いて小売業首位の売り上げになったが、ずっと採用されなかった。スーパーが採用されるのは、00年にイトーヨーカ堂(現・セブン&アイ・ホールディングス)やジャスコ(現・イオン)が入るまで待たなければならない。京セラやファナックも採用されたのはその時期。リース業に至っては、80~90年代にすごい勢いで成長していたが、オリックスさえいまだに入っていない。
一般に新しく入る銘柄は株価が高い。交代させられる銘柄は多くが安い。入れ替え後の分子、つまり株価合計は大きくなり、それに合わせる形で分母、つまり除数は上がる。
全体として見れば、除数の下がり方は構成銘柄の株式分割のスピードを反映しているはずだ。ところが日経平均は80年代後半あたりから、00年まで下がらない。これは入れ替えの際に、成長する銘柄を十分に採用してこなかったからだ。そのために除数は横ばいになってしまった。
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