日経平均株価が犯した「三つの罪」 『日経平均と「失われた20年」』を書いた宮川公男氏に聞く

✎ 1〜 ✎ 47 ✎ 48 ✎ 49 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
日経平均株価は「三つの罪」を犯し、経済を映す「鏡」としての役割が大きく歪んでしまっているという。統計研究会会長で、一橋大学の名誉教授である宮川公男氏に聞いた。

──アベノミクスで頑張っても、日経平均株価は上がりにくくなっているのですか。

簡単には2万円台に乗せないと見ている。この間、日経平均は三つの基本的な問題を抱え込んでしまった。「三つの罪」を犯したからだ。それは、算出している日本経済新聞社も気がついているはずだ。

みやかわ ただお 統計研究会会長、一橋大学名誉教授。麗澤大学名誉教授。1931年生まれ。一橋大学経済学部卒業。一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了。商学博士(一橋大学)。一橋大学商学部教授、同部長、経済企画庁システム分析調査室長などを経る

──三つの罪?

順次説明したいが、わかってもらうには、そもそもダウ式平均株価の計算方式の説明がいる。

手作業での計算の時代に始まったから、ダウ式平均株価の計算の仕方は単純だ。選定された構成銘柄の株価を足して、構成銘柄数で割る。

これを出発点にした単純算術平均タイプだ。ただ、連続性を確保するために工夫がされている。

構成銘柄の株式分割や入れ替えが発生すると、分子の株価合計が断続的に変化する。それによる平均株価の変化が生じないように分母(=除数)を修正する。

2012年末現在、日経平均の除数は、これまでにそのような修正が続いているので、構成銘柄数そのものの225ではなく、そのほぼ9分の1の約25(24.975)になっている。

──構成銘柄採用に関する問題点を指摘しています。

1980~90年代に高成長を遂げた企業を構成銘柄に適切に採用しなかった。そのため、特に90年代の「失われた10年」において、日経平均は低迷の度が増した。

たとえばダイエー(現・イオン傘下)は、70年に三越(現・三越伊勢丹ホールディングス)を抜いて小売業首位の売り上げになったが、ずっと採用されなかった。スーパーが採用されるのは、00年にイトーヨーカ堂(現・セブン&アイ・ホールディングス)やジャスコ(現・イオン)が入るまで待たなければならない。京セラやファナックも採用されたのはその時期。リース業に至っては、80~90年代にすごい勢いで成長していたが、オリックスさえいまだに入っていない。

一般に新しく入る銘柄は株価が高い。交代させられる銘柄は多くが安い。入れ替え後の分子、つまり株価合計は大きくなり、それに合わせる形で分母、つまり除数は上がる。

全体として見れば、除数の下がり方は構成銘柄の株式分割のスピードを反映しているはずだ。ところが日経平均は80年代後半あたりから、00年まで下がらない。これは入れ替えの際に、成長する銘柄を十分に採用してこなかったからだ。そのために除数は横ばいになってしまった。

次ページどんな点が不十分だったのか
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事