デキるあなたが「無能な管理職」に転落する日 「イマイチですね」の烙印から逃れられるか

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筆者はこのように、ピーターの法則にはまったときこそ、キャリアを考えるいい機会であると考えます。

実は筆者はかつて、この法則に縛られかけたことがありました。前職で高い営業成績を続けて管理職に若くして抜擢されたのですが、担当した部門の業績が不振を極めてしまったのです。さらに部下の退職、筆者のマネジメントに対する不満が人事部に告発されるなど、無能といわれても仕方のない状態に陥りました。

そのとき「ピーターの法則にはまっているね」と指摘してきた先輩がいたのです。激しく落ち込んだことを覚えています。

ただ、その1年後には業績は大きく上昇、無能の評価は免れました。ただ、振り返れば無能とされかねない、本当にギリギリの状態だったのです。

その理由は自分が無能であり、努力しても仕方ないとあきらめかけていたから。周囲からは「営業としては優秀だったけど、管理職には向いていないね」との声が頻繁に出ていました。この声もあきらめを加速させました。ただ、ピーターの法則にはまらなかったのは、自分が管理職という新たな仕事に本気でゼロから取り組んでいないと感じていたので、1つの試みをしてから判断しようと考えました。

それは自分が管理する、営業現場の仕事に過剰介入しないこと。自分の営業方法を部下に強要する。あるいは物足りない部下の営業活動は自分が代わりに代行する……という行動をしない。つまり、あくまで営業現場の仕事と管理職の仕事は別物であると切り分けをしたのです。

筆者にとっては「自分が営業すればすぐに結果が出るのに……」と強いストレスを感じる毎日に変わりました。しかし、そこはこらえ、自分は管理職なので部下の相談ごとに対してアドバイスを送る。あくまでアドバイスであり、最後は自分で決めて行動させることを徹底しました。その後、これらの試みが奏功したようで、組織の業績は向上し、信頼関係の高い組織に変化していきました。

昇進することで役割は変化する

改めて振り返れば、昇進することで役割、期待される能力は変わります。180度変わるわけではないですが、新たに身に付けるべきこと、逆に無用になるものがあります。この無用なものを抱え込み、それにすがるような仕事をしていると、無能な存在になっていくのではないか?と感じています。

さて、ピーターの法則にはまらない方法として、筆者の体験を紹介させていただきましたが、大事なことは昇進後に期待される役割・能力を確認して足りない部分を果敢に補い、新たな土台を強固にする努力をすることにあると思います。

昇進するということは新たな土台をつくる必要ができたということ。そう認識して、学びの機会をドンドン増やしていけば、無能と呼ばれる可能性は下がっていくのではないでしょうか?

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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