それは、現場で活躍し高く評価される能力と、管理職として活躍する能力には大きな違いがあり、管理職になるまで誰も確かめるすべがないと思い込んで、昇進が決定されているから。名選手、必ずしも名監督にあらずとの認識があるにもかかわらず、現在の仕事で有能であれば昇進後も有能であるに違いないし、確かめようがないと誰もが思っているのです。
ところが、昇進後パッとせず、部下などから「イマイチですね」と無能の烙印を押されることが多いのが実情。結果として活躍できない管理職のまま、その役割に滞留する人材が増えて、組織的には困った状態になっているケースがたくさん生まれているのです。
認知バイアスが支える幻想と、それが壊れるとき
若手社員からすれば、管理職が現場で活躍した場面を知らないので「あの人はなんで管理職をしているのですか?」と素朴に疑問を感じたりします。一方で現場時代を知っていると「現場で成果を出した人だから、あの無能に見える動きにも、何か意図があるに違いない」と、ハロー効果=認知バイアスに支えられて、何とか前向きにとらえようと努力したりします。
ただ、そうした前向きな社員たちが「やっぱりあの人は管理職に向いていない」と感じ始めてしまうと、決定的な無能の烙印が押され、後戻りできないことがあります。ここまでいってしまった人がたくさんいると、職場には閉塞感が醸成され、意欲的な若手社員の離反、退職というリスクが生まれてきます。そのようにしたい職場はないでしょう。では、いったいどうしたらいいのでしょうか?
もちろん、無能と呼ばれた人が根本的に無能であるといっているのではありません。管理職という仕事に限ってのことにすぎません。
もし現場の、たとえば営業の仕事に専念していたなら、変わらず高く評価されていたことでしょう。もちろん、現場を離れて管理職になっても、変わらず高く評価される人もいます。そうした人はさらに昇進を重ねます。部長、本部長とキャリアを上げていくことでしょう。
ただ、そのどこかのポストで限界点に達して、無能と呼ばれることになります。ピーターの法則によれば、無能になる前までのポストで仕事をすることが自分にとってハッピーな状態なのだそうです。
会社内におけるポジションは自分でなかなか選べないものですが、自分が有能な評価を得られる状態で仕事をすることは、心地よいに違いありません。仮に昇進して報酬や権限レベルがあがっても、無能と烙印を押された状態であったとしたらどうでしょうか?
たとえば、野球選手が日本球界で大活躍してメジャーに挑戦。ところが、メジャーでは試合では出場さえ厳しいくらいの低い評価に甘んじてしまった。しかも、その評価を覆すのが厳しく、無能の烙印を押されたとしたら、次にどうすべきか? メジャーにとどまる。自分が活躍していた日本に戻る。選択肢は2つあります。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら