岩手17歳バレー部員は「遺書」に何を書いたか 遺族と調書も明かす「行き過ぎた指導」の実態

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遺書だけでなく、県教育委員会が作成した調書がある。文科省通達の「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)」にのっとり、7月下旬から8月初旬にかけてまとめられた。対象は、バレー部員や教員など関係者53人。調査書はA4で20ページにわたり、部員や他教員に、顧問による亡くなった生徒に対する言動などを聴き取りしている。

そこには「おまえのせいで負けた」「部活やめろ」といった数々の暴言、さらに、助言を求めても無視するなど生徒を心理的に追い込む行為があったことが、合わせて44項目も挙げられている。

調書を読んだ両親によると、生徒が「ひとりで教官室に呼ばれることも少なくなかった」との証言もあったという。生徒と密室で2人何を話していたのか、内容を知るのは顧問だけだが、その詳細は明らかにはなっていない。

調書の中にあったこんな言葉に、両親は驚いたという。たとえば

「代表に選ばれているのにどうしてできないんだ」

「背はいちばんでかいのに、プレーはいちばん下手だな」

など。まさに言葉の暴力だ。

6月の全国高校総体決勝で敗れたあとには、「おまえのせいで負けた」と言ったという。亡くなる3日前にも、「だから部活やめろって言ってんだよ」「もうバレーするな」といった強い言葉を浴びせていた。

言葉の暴力ならいいのか

2012年12月に大阪市立桜宮高校バスケットボール部で顧問の暴力やパワハラを苦に17歳の男子部員が命を絶った事件を機に、スポーツ界と教育界は暴力根絶に舵を切った。「体罰はいけない」という認識は、少しずつだが広まってきたはずだ。

だが「暴言」や「無視」など、言葉の暴力やパワハラ的な態度についてはどうだろうか。学校現場は「体罰」さえなければ平気だと思ってはいないだろうか。生徒を従わせる側が発する言葉の重みを軽く考えてはいないだろうか。

続く後編記事では、顧問と学校側による不可解な行動について取り上げていく。

なお岩手県教育委員会は今日10月13日午後から、遺族側の要望に応える形で面談する予定だという。遺族側との面談は初めて。その席で顧問の指導内容や校長の対応、11月2日に開幕する春高バレー岩手県予選に現顧問が引率して出場するかどうかなどの見解を述べると思われる。遺族は面談後、記者会見する予定だ。

(後編記事は10月14日に公開予定です)

島沢 優子 フリーライター

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しまざわ ゆうこ / Yuko Simazawa

日本文芸家協会会員。筑波大学卒業後、広告代理店勤務、英国留学を経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。主に週刊誌『AERA』やネットニュースで、スポーツや教育関係等をフィールドに執筆。

著書に『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)、『部活があぶない』(講談社現代新書)、『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)など多数。

 

 

 

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