会社員は「上昇志向中毒」から卒業できるか 「やる気」を見せないと組織で生きられない

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問題を解決するには、誰かがやらなければならない。でも、自分が火中の栗を拾うのは嫌だ。みんな生活が大切です。だから、匿名さんが社会を変えるような行動を起こさなくても、それを責められる人はいません。ただ、社会はいつまでも変わらないことになります。こうして長時間労働は解決しないまま、いたずらに時間ばかりが過ぎているのです。

会社とは別の価値観で成立している「世界」を持つ

現実的な選択としては、仕事はお金のためと割り切って、趣味や友達で私生活を充実させるという手があります。月会費を払えば何回でも通えるスポーツジムは、お財布にもやさしいのでオススメです。筋トレほど努力と成果が比例するものはありませんから、すぐに成長の手応えを感じることができます。同じ曜日や時間帯に通っている人と顔見知りになりやすく、友達もできるので一石二鳥です。

会社では「いくら筋肉があっても仕事には役に立たない」などと揶揄されることもあるでしょう。でも、そんなことは関係ありません。会社とは別の「世界」を手にいれたのですから、仕事の役に立とうが立つまいが、少なくともスポーツジムにいる間は筋肉が多ければ多いほど「正義」という価値観を持つべきです。趣味は自由に選んでいいので、運動に限らず自分のやりたいことをしてください。大切なのは、会社とは別の価値観で成立している「世界」を持つことです。

一人でいるのが好きだったり、趣味がなくて困っている場合、頑張って趣味や友達を作ろうとすると余計に疲れてしまいます。無理をしなくても、さぼりであれば簡易的に自分だけの「世界」をつくることができます。外回り中の会社員が、漫画喫茶やマッサージ店に行くというのが典型例です。内勤であれば、頻繁にトイレや喫煙所へ行ってもいいでしょう。

誰でも新入社員の頃は、学生時代の生活と大きなギャップがあるので、企業の求める働き方に違和感を抱いていたはずです。それが何年も経過すると「当たり前」になり、逆に、会社になじめない新入社員を哀れな目で見るようになります。そして、「最近の若い奴は……」と嘆くわけです。

筆者からのいずれの提案も「非現実的だな」とか「くだらない」とか思われたとすれば、会社員としての生活が長くなっていることで、自分を苦しめている「生活態度としての能力」をすっかり内面化しているのかもしれません。

匿名さんは「上昇志向あるフリをしてなんとかしのぐ」のを、見る人が見ればわかると書いていますが、ひょっとすると監視しているのは自分自身である可能性もあります。もちろん周りの目が厳しいのは事実でしょう。でも、自分だけは自分にもっとやさしくしてもいいはずですし、これなら誰にも迷惑をかけることなく、いますぐにできますよね。

田中 俊之 大妻女子大学人間関係学部准教授

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たなか としゆき / Toshiyuki Tanaka

1975年生まれ。2008年博士号(社会学)取得。武蔵大学・学習院大学・東京女子大学等非常勤講師、武蔵大学社会学部助教、大正大学心理社会学部准教授を経て、2022年より現職。男性学の第一人者として、新聞、雑誌、ラジオ、ネットメディア等で活躍している。

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