会社員は「上昇志向中毒」から卒業できるか

「やる気」を見せないと組織で生きられない

つい先日も、三菱電機の男性社員5人が、長時間労働が原因で精神障害や脳疾患を発症し労災認定を受け、うち2人は過労自殺をしたというニュースがありました。生きるために働いているのに、働いていたら体を壊したり、最悪の場合に死んでしまうなどということが、いまだに起こっています。「働きすぎ」について議論を30年以上続けても、事態が大きく改善したとは思えないのです。

経済学者の熊沢誠さんは、日本の企業では「生活態度としての能力」が求められていると指摘しました。1990年代のことです。「生活態度としての能力」とは、自分の生活のすべてを仕事に注ぎ込める能力を意味します。これを基準にすると、残業や休日出勤に対応できる社員は「能力が高い」、会社の要求よりも自分の都合を優先する社員は「能力が低い」と評価されることになります。

生活のすべてを仕事に注ぐ以上、転勤にも対応する必要があります。残業や休日出勤に加えて、住む場所までも会社の意向に合わせることができれば評価は上がるのです。

最近、しばしば「昭和」という言葉が古い慣習の象徴として使われていますが、平成も終わろうとしている現代においても、多くの日本企業では、いまだに「生活態度としての能力」が評価基準となっています。したがって、出世すればするほど、さらに生活を仕事に注ぐしかなくなるのです。匿名さんが疑問に思った企業における搾取の構造は、このように説明することができます。

残念ながら、中年男性を取り巻く労働環境が急激に改善することはないでしょう。「生活態度としての能力」という評価基準に加えて、日本では男女の賃金格差という問題があるからです。フルタイムでさえ、男性の賃金を100とした場合、女性の賃金は70程度にすぎません。そのため、子育てや介護を理由にした退職や時短勤務は、ほとんどの家庭で収入の低い女性が選択することになります。逆に言えば、一家の大黒柱として男性は、長時間労働に耐えてでもしっかりと稼ぎ続けなければならないのです。

個人ができる対抗

根本的な問題解決を望むのであれば、社会を変えなければなりません。社会が相手では個人は無力だと思うかもしれませんが、できることはあります。たとえば、定時に帰り続けるだけで、1日8時間が「最低限」でそれ以上が「普通」という、正社員に求められる働き方に対する抵抗になります。

ただ、社会を変えようとすると、個人的には利益よりも不利益のほうが大きくなるという困難に直面します。定時に帰れば、周りから白い目で見られるだけではなく、昇進に響くはずです。「変わり者」というレッテルを貼られ会社内で居場所がなくなり、最悪の場合、退職を余儀なくされる可能性さえあります。

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