自然災害大国の日本に必須な訪日客への喚起 外国人観光客への災害情報発信の整備が急務
今年の夏はたくさんの自然災害が日本を襲った。西日本を中心に見舞われた平成30年7月豪雨、全国的な猛暑、9月4日には台風21号の影響で関西国際空港が水没した。その2日後の6日に北海道胆振東部地震が発生した。古くから自然災害が多い国だが、このように立て続けに起こった状況は珍しい。
一連の自然災害に対して、日本のメディアの報道において今までと違う1つの変化がある。それは、孤立無援に陥った外国人への注目だ。
その理由は、ますます無視できなくなる訪日観光客の存在感だろう。猛暑と豪雨で百貨店が苦戦したり、関空が被害を受けた直後は大阪の黒門市場を訪れる外国人観光客が激減し、インバウンド関連業界に不安の色が強まった。
震災発生時の中国語のSNSをみると、「地震はこんなに怖いんだ。死ぬかと思った」「やはり危ない国、しばらく避けよう」「今北海道にいるが、言葉が通じなくて、一秒でも早く帰国したい。誰か助けて」といった不安にあふれる投稿も多かった。
しかし、回復も速かった。中国のオンライン旅行会社Ctripの調査によれば、台風や地震に見舞われたにもかかわらず、10月の大型連休・国慶節に中国人が訪れる海外旅行先のいちばん人気は、初めて日本になっている。
本稿では、自然災害が訪日中国人客数にもたらす影響、中国人からみる日本の災害対応、そして今すぐに着手したほうが良い対応策について分析したい。
7年前の東日本大震災とは少し異なる
結論から言うと、今夏の自然災害が観光業にもたらしたネガティブな影響は、一時的なものにとどまると考えられる。地震や台風が発生するから、中国人はもう日本に行かないという発想はあまりない。
その理由は、東日本大震災のような長期にわたるダメージを与えていないことだ。
2011年3月に発生した東日本大震災の影響は依然として残っている。地震に伴う福島第1原子力発電所の事故が世界を驚かせたからだ。「福島=放射能(中国語では『輻射』)が多いところ」というイメージが、国内外のメディアの報道により広く知れわたった。
中国人はすべての「輻射」に敏感だ。特に子どもについては、少しでも避けようとする傾向がある。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら