実際の作業については、2人1組で実施することが原則だ。1人が数えて、もうひとりがその数をかきとめる。数え方や表記の仕方は会社によってルールがある。そのルールに従って棚卸しをしているのか、チェックするのが立会人だ。立会人は本社の経理などが担当することが多い。
「私的な郵便物にも使っているのか、切手が帳簿より不自然なほど足りなくて驚いた」(事務職・48歳)、「面倒な棚卸し作業に立候補する人がいて、みんなが不思議がっていたら、横流しをしていた。自分で数えてごまかそうとしていたんだね」(専門商社・30歳)、「新人の頃、1週間のうちに大量の仕入れ伝票と返品伝票をつくらされた。今、考えると、取引先メーカーの粉飾の片棒を担がされていたと思う」(流通・45歳)
在庫は不正の温床だからこそ棚卸しが重要
「在庫や備品はいろいろな操作に使いやすい。在庫を水増しすれば、利益を過大に見せることができる。また、従業員の誰かが横流しをしているケースは、決して珍しくない。このように在庫は不正の温床になりやすいから、公認会計士が立ち会うわけです」(大野氏)
公認会計士に見つからないように、公認会計士のチェックのスケジュールに合わせて、在庫の隠し場所を次々に移動させるといった悪質なケースもある。
このように棚卸しには、さまざまな問題が隠されている場合もある。
最後に、はじめて棚卸しをする若手社員のために、棚卸しのポイントを伝えておこう。
棚卸しの手順は各社きちんと決まっているし、実施する前に、説明がある。こう数える方が早いなどと、勝手な解釈を加えず、ルールに沿って生真面目に数えることが鉄則だ。
在庫の変化を発見することも目的のひとつなので、漫然と数えていれば見過ごしてしまう。数えながら、壊れてないか、汚れていないかなどをチェックすることが重要。異変を発見したら、必ず上司や先輩などに報告をする。
新入社員でも立会人になるケースは少なくない。ルール無視の棚卸しをしている人を発見したら、きちんと注意をすることが重要。時には数え直しを命じることも必要だ。
棚卸しは、自社にどんな製品や資産があるのか見学する、絶好のチャンスでもある。漫然と数えれば単純作業だが、「どうしてこんなに在庫があるのか?」「かなり古そうな機材だな」などと考えながら数えていると、仕事の基礎力がアップしていく有意義な時間になるだろう。退屈だと思っていた棚卸しが知的作業に変わるはずだ。
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