「消耗品は、1年間で使い切るもの。半年分とか1年分の使い切れない消耗品が倉庫にあれば、それだけのお金が倉庫に眠っていることになるので在庫としてカウントします」(大野氏)
同様の理由で、余分に印刷したパンフレット類、余分に購入した文具類なども、在庫としてカウントするのが正式。だから、具体的な商品を持たないサービス業などでも、棚卸しは必要になる。
「決算期にやる必要はありませんが、パソコンやテレビをはじめとした固定資産の棚卸しも必要です。もし壊れていたり、無くなったりしていれば、帳簿から除かなければなりません。償却資産税の課税時期が1月1日時点なので、固定資産については12月上旬にやるところが多いですね」(大野氏)。冒頭のボートのエピソードも、この固定資産の棚卸しにあたる。
「開封した牛乳やバターなどは、謎の係数をかけて在庫を計算している」(飲食・32歳)、「仕掛品(作りかけの製品)の在庫の扱いは、棚卸しをする人によって違うので困ったものだ」(中堅メーカー・43歳)
「どうやって数えるのか、厳密な決まりはありません。それぞれの会社でルールを決めてやります。ただ重要なのは、毎年、同じルールでやること。そうすることで帳簿に継続性がでてくるわけです」(大野氏)
たとえば段ボールいっぱいのネジがあった場合、段ボールの開封前なら在庫で、開封後なら費用として計上していたりする。レストランなら、牛乳パックを開けたら費用、開ける前は在庫といった具合だ。
仕掛品や材料などの計算方法は会社によってまちまち
砂や砂利などは、円錐形に積んでいくので、底辺と高さを測って体積を算出するそうだ。石油などの液体については、タンクの上から長い棒をつっこみ、どこまで入っているかをチェックして、残量を計算するという。
もちろん、細かく数えるところもある。
「大量のネジを前に、担当の公認会計士に集中力が続かないから数えるのは無理だと文句を言ったら、ネジの頭がひっかかるくらいのパイプを50本並べて、そこに1本ずつネジを差せといわれた。全部に差したら、全部外して、次の50本を差す……。『50本単位で数えれば、数え間違いないでしょう』だって。やりましたよ。2700本もあった! もうネジの担当は勘弁ですね」(物流・35歳)
「難しいのは仕掛品の場合。本来、この状態まで何時間かかって、材料はいくらくらい投入して、工数は何時間と計算します。実際、上場しているような大企業は、そうやって計算しているところが多い。しかし、中小企業がそこまでやるのは難しい。そこで、仕掛品がどの工程に置かれているかで判断する。たとえば、全工程が100メートルのラインなら、20メートル進んでいたら製品価格の20%を仕掛品として計上、40メートルなら40%といった、簡易な計算方法を利用するところもあります」(大野氏)
このように計算のルールをきちんと決めていないと、担当した人によってバラバラということになるわけだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら